第14話 天王けあきの七不思議退治 終わり
――――一方、その頃
「先輩は何をしてるんでしょうか?」
そこは学校の中庭。周囲には葉桜と池しかない。
図書委員として仕事がない日。 基本的にぶらぶらと学校を散歩して過ごすあかり
。
ここは、彼女のお気に入りの場所だった。その理由は――――
「う~ん、お腹が好きました」
池に泳ぐ鯉を見つめている。
「黒や赤の模様……高級錦鯉。私の鑑定眼で推定30万円。 一体、どのような味が……」
じゅるり
「いいけません! 私とした事がヨダレなど、はしたない! ですが……少しだけなら……むっ!」
あかりは動きを止めて、視線を一か所に向ける。 そこは科学室の場所。
「なんでしょうか? 首の後ろに微弱な静電気を流られるような感覚……これはラブコメの波動?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「くそっ! 走る人体模型か……一体、どのくらい俺は走った?」
(走る人体模型のルール。 鬼ごっこで負けたら結界に閉じ込められ、皮膚を剥がしされる)
「掃除道具を入れたロッカーの中……鬼ごっこというより、かくれんぼうだぜ。見つかるなよ」
だが――――
「み つ け た !」
「うぉ! 見つかったか! 強引に結界内に閉じ込められる」
「皮膚だぁ、皮膚を寄こせ! お、おでは完璧な人間に――――」
「こ、こいつ、やはり
「――――っ!」
「やはり、結界が解けて行く。お前の弱点は人間になろうとするあまり、人間の弱点に過剰に反応してしまう事だ」
「よ、よくも、オデを蹴ったな!」
「止めとけよ、お前は掴む事で強化するタイプだ。だが接近戦は俺の間合いでもある」
「お、オデを……ば、馬鹿にするな!」
「来いよ? どっちが早いか? スピード勝負だぜ?」
「――――うがぁ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――――オラオラオラオラ―――― オラオラ―――
オラぁ!? さらに! 出てこい、天王けあき!」
「はい、よく今まで生き延びましたね、翔くん。でも安心してくださいね、ここが決着です」
『斬』
「やったか!」
「――――いえ、ごめんなさい」
「ん! 立ち上がって逃げていった!?」
「霊的存在は斬れても、樹脂とかプラスチックを一刀両断とはいきませんでした」
「マジか、それじゃ今までの方法じゃ……いや、方法はある」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ふぅ……ふぅ……許さない。 オデを馬鹿にした人間……次は皮を剥ぎ取る!」
「いや、そうはならない」
「――――! なで? なで、ここにオデがいるとわかった」
「いや、化学準備室に帰るか? 普通?」
「お、お前なんか、捕まえさえすれば怖くなんてない――――」
「掴んだな? お前……掴んだな」
「ふぇ? お、オデの胸に、何かが打ち付けられた!?」
「お前から逃げている時、武器になるかと思って美術部から拝借した……彫刻用の
「うっ? うわあああぁぁ、オデの心臓に突き刺さっている!?」
「人間になろうって企んでいるお前にとって心臓が打ち抜かれるのは……文字通りの致命傷だろ? もう……ここで成仏しろ!」
「おのでぇ! おのでぇ! きさん、ゆるさん」
「もう、何言ってるのかわかんねぇよ。こいつでとどめだ!?」
断末魔。
もう人体模型は走らない。
「見事です、翔くん。分断された時は、もうダメかと思いましたが……よく1日で、戦士のような成長を!」
「あぁ、けあき。こいつで七不思議の悪霊も5体目か」
「はい、音楽室のピアノ、13階段の悪魔、透明な二宮金次郎、開かずの教室、そして、今の走る人体模型。あとは、トイレの花子さんだけですが、分断されている間に花子さん討伐は済ませてきました」
「おぉ、それじゃ七不思議討伐も終わりか……ん? あれ?」
「どうか、しましたか?」
「いや、七不思議なのに、6つしかないのか?」
「いえ、7つありますよ」
「え? でも……」
「いいですか、翔くん? 学校の七不思議と言うのは6つ知ると7つ目が自動で発動する……そういう種類の現象です」
「あぁ、なるほど……それなら、今からがラストバトルって事か!」
「はい、最後は――――
中庭に封印された狐の大怨霊ですね!」
「――――え? まて、それって……」
「ほら、来ましたよ。 この1日で深まった私たちの絆を見せつけて上げましょう! 最後の七不思議に!」
「いや、待て……! 本当に来たよ! 走ってきてる! 人体模型みたいに、あれよりも速い! 落ち着け、あかりぃぃぃぃ!?」
「翔パイセン? 誰よ! その女!」
「少しばかり遅かったですね、狐の怪物さん。もう翔くんは、この1日ですっかり私のパートナーになりましたよ」
「ね……ネトラレ!? この怨み許さまじき!」
「落ち着けってばよ!」
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