第13話 天王けあきの七不思議退治②
「とりあえず、七不思議の場所と確認作業の手伝いと思ってくれれば良いわ」
「確認作業ね。それで次は旧校舎の13階段ってね……ん? あれ?」
「どうか、されましたか?」
「いや、2番目に旧校舎って順番に意味があるの? わざわざ、離れた場所に行くよりも、他にも理科室とか近い場所があるけど?」
「そうですね、七不思議を討伐する順番は重要です。それを説明するのは難しいので省略しても構いませんよね?」
「そりゃ、俺は門外漢だからなぁ。専門的な説明で混乱するなら、君に任せるよ」
「それはありがたいです」
「待て! なんだ、その邪悪な笑みは!? 何か企んでいるのか?」
「いえいえ、翔くん。すでにここは戦場ですよ。警戒を怠らないようにお願いします」
「むっ……そう言われると、言い返せないな。 しかし、旧校舎の階段が12段から13段に増えるって、何が危険なんだ?」
「危険でしょう? 人間の認識が気づかぬ間に歪められただけでも日常生活に弊害が生まれますよ。加えて、実際に空間が歪んでるなら……それは強力な悪霊の存在証明です」
「なるほど……日常的に階段の上り下りで段数を間違えていたら、いつか大怪我を起こす。 なにより、強烈な悪霊が潜んでいたら、いつ人を襲うかわからない……そう言う事か」
「理解が早くて助かります……所で翔くんは気づいていますか? 今、上がっている階段が『13階段』だと言う事を?」
「……そんなバカな。ここは2階。目的地は3階だったはず……いや! 既に認識障害を受けている!」
「えぇ、私たちは既に攻撃を受けています。ゆっくり、階段を下りてきてください」
「あぁ……」
「慎重に、ゆっくりと……おそらく階段で転ばせる事が攻撃条件の1つでしょうね」
「ふぅ……! 何とか下り切ったぞ」
「いえ、後ろに認識できない階段が、もう1段ありますよ。気をつけてください」
「マジか! そんな、平坦な廊下にしか……」
「待ってください! 翔くん! 今のは私じゃありません! 私の声じゃない!」
「え!? あ、脚の感覚が、踏み間違えた……いや、間違えさせられただと!」
「悪霊が罠を!? やはり、強化されてる……翔くん、落ち着いてください。今、何が見えてますか?」
「あれはっ! 階段、一番上の段に紐が……藁を編んで作られたような」
「13階段……西洋の死刑と混じり合って変貌して? ならば、紐が飛んできます! 避けてください! 狙われているのは翔くんの首です!」
「――――っ! 悪魔が、悪魔が投げ縄のように――――」
「避けれましたか? 私は条件を満たしていないので、その攻撃主が見えません。翔くん、とにかく喋ってください」
「攻撃を回避しながら、喋り続けろって無茶を言う」
「無茶でもやるのです!」
「わかったよ! やるよ! 悪魔が階段から――――飛び降りて来た!」
「なら、こうですね! ――――どうですか!」
『斬』
けあきの斬撃。目標が見えない状態でありながらも翔の視線を読み、対象の位置を捕縛した……らしい。
「当たった。でも、当たったのは腕だけ! 怒ってる! 俺に対して怒ってるよ!」
「わかりました。それは非常に――――ありがたいですね」
「え?」
「怒りに動きが単調になれば、予測するのは実に容易くなります」
「け、蹴っ飛ばした!?」
「なるほど、触れる事で怒りの矛先が翔くんから私に変わったみたいですね。今なら―――― 」
13階段の悪魔。
『ブーン ブーン』と投げ縄のように荒縄を振り回し、けあきの細首を狙う。
そして、それを投擲開始する。 だが――――
「斬ります」
「自分に向かってくる荒縄を切断した! そのまま走って――――悪魔を斬る!」
「これで終わりですね。どうですか、翔くん? 念のために階段を数えてください」
「わかった……12段だ。これで、この学校の13階段は消滅した」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「今日の所は、これで終わりにしましょうか?」
「ん? 今日中に七不思議討伐を終わらせる予定じゃなかったのか?」
「はい、そのつもりでしたが、甘く見ていましたね。あの狐が悪霊に及ぼす影響力を」
「そんなに……」
「はい、所詮は学校の七不思議。討伐するのは簡単と思っていたのですが……先ほども翔くんを危険な目にあわせてしまいました。これは、私の失敗です」
「それは気にしなくてもいいさ。 そんな事よりも――――」
「はい? (そんな事よりも??? 今、危険な目にあったのに?)」
「少々、俺が危険な目に合うくらいなら今日中に七不思議は討伐できるのか?」
「……おそらく。ですが、これ以上付き合ってもらうわけにも行きません」
「いや、解決できるなら、できるだけ早く解決してもらいたいんだ」
「? それは、なぜですか?」
「もちろん、あかりが原因って言うのが大きいけど……」
「けど?」
「明日、図書委員会で彼女と会うんだ。だったら、後ろめたい気持ちもなく会いたい」
「――――」
「だめかな、けあき?」
「――――驚きました。初めて異性から名前を呼ばれましたから」
「え? そこ」
「なるほど、あの狐が魅かれるわけですね。もし、貴方が狐と会うよりも早く合えていたら求婚していたところですよ」
「いっ!?!? 冗談……だよな?」
「いいえ、もし良かったら、貴方も闇払いの訓練をしませんか? 学校だったら賀茂先生も私もいますので……」
「あ……うん、考えておくよ」
「いろいろ勉強して、術を使えたら、狐の役にも立ちますよ?」
「是非にもお願いします」
「よし!」とけあきが小さなガッツポーズを取るのを翔は、見逃さなかった。
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