私が蹂躙する。
シャルセアが蹂躙する。
むっつの戦斧が暴風のように吹き荒れる。
一歩、進む度に六度振るわれる重鋼の風は、騎士たちを薙ぎ払う。
ヨルガリアが蹂躙する。
既に生み出されたスケルトンは百を超える。
その一体一体は弱いものの、破壊されたスケルトンは時間が巻き戻るようにして再生を果たす。
一向に数は減らず、剣で武装したスケルトンたちが波濤のように騎士団にぶつかる。
そしてその度、死する騎士が起き上がり、仲間に襲いかかるのだ。
私が蹂躙する。
同時発動〈マジックハンド〉、同時発動+魔法武器化+武器伸長〈マナジャベリン〉、多刀流〈死棘〉、――発射。
十二の長槍が死を告げる。
近づく者は剣で叩き潰し、距離のある相手には死の長槍が貫いていく。
かくして、戦場に騎士は散る。
百の騎士たちは従者ともども朽ち果てた。
死体は三百を超える。
大地は血に濡れて、異臭を放っている。
白いスケルトンの集団がチリとなって空気中に溶けていく。
アンデッドと化した騎士たちも糸が切れた人形のごとく、その場に崩れ落ちた。
私は魔法範囲拡大を全力で行使した〈クレンリネス〉で大地を浄化する。
その後、騎士や従者たちの死体や散らばった装備品、輜重を〈ストレージ〉に収めていく。
「ご苦労さま。ふたりとも、城に戻ろうか」
「は。マスター」
「ハハハ。騎士とはか弱くとも務まるものなのですな」
騎士団ひとつが消息を絶ったことがキウス王に知れるのは、その数日後のことだった。
王都の門前に騎士や従者たちの死体が無造作に山と積み上げられていたのを発見したのは、門衛の兵士だったそうだ。
かくしてキウス王国は敗北を喫した。
平然とした顔をして城に戻ると、ミアラッハが「話し合いはどうなったの?」と聞いてきた。
「物別れに終わったよ。どうやらあちらはこちらの戦力を過小評価していたみたいだ」
「へえ。それでどうなったの?」
「全滅させた」
「…………え?」
「いや、シャルセアとヨルガリアを呼んで、騎士団を壊滅させた」
「そ、そう。大丈夫なのそれ」
「んー。多分、大丈夫だよ。とりあえず王都に行って、死体は返してくるから、数日休息にするね」
「分かった……」
さてステータスの確認だ。
結構、人を殺してしまったから、レベルアップしているはず。
ほうら、パラディンが30レベルになってる。
新しいスキルは?
【霊鎧】だ。
アンデッドから受ける直接ダメージを大幅に軽減するというスキルだ。
攻撃力が上がらなかったのはちょっと残念だ。
《【転職】
パラディン(レベル30)
ノーブル(レベル35)
ファイター(レベル24)
スカウト(レベル33)
フェンサー(レベル29)
ランサー(レベル27)
グラップラー(レベル31)
プリースト(レベル20)
メイジ(レベル22)
ブラックスミス(レベル36)
アルケミスト(レベル26)
マーチャント(レベル1)
オフィシャル(レベル1)
メイド(レベル1)
トリックスター(レベル28)
バード(レベル22)
ダンサー(レベル1)
テイマー(レベル1)
ロード(レベル25)
ウォーロード(レベル26)
カースドナイト(レベル1)
アサシン(レベル21)
チャンピオン(レベル20)
ビショップ(レベル1)
ウィザード(レベル22)
セージ(レベル24)
サモナー(レベル26)
ネクロマンサー(レベル1)
パペットマンサー(レベル20)
モンク(レベル1)
ルーンナイト(レベル22)
ハーミット(レベル2)
バトルマスター(レベル28)
ダンジョンマスター(レベル21)
エンペラー(レベル20)》
次は順当にモンクだ。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス モンク レベル 1
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】
【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】【人形使役】【剣技】
【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】
【素手格闘】【投げ】【関節技】【対人戦闘】【気配察知】【罠感知】
【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】
【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【魔法武器化】
【魔力強化】【怪力】【俊足】【気品】【美声】【カリスマ】【幸運】
【指揮】【鼓舞】【福音】【光翼】【創世神信仰】
【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】
【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》
さてシャルセアはのレベルはどうだろう。
案の定、レベル80を超えていた。
スキルが増えるよやったねシャルセア。
新しいスキルは?
【戦技教導】だ。
その名の通り、戦い方を教えることにボーナス修正があるスキルだ。
《名前 シャルセア
種族 ヘカトンケイレス 年齢 287 性別 女
クラス ウォーロード レベル 81
スキル 【巨人語】【レクタリス地方語】【礼儀作法】【剣技】【剣術】
【槍技】【槍術】【斧技】【斧術】【闘気法】【素手格闘】【投げ】
【関節技】【指揮】【号令】【カリスマ】【戦技教導】【大工】
【農業】【牧畜】【料理】【怪力】【宗匠】【俊足】【叡智】
【クライニアとの絆】》
ちなみにヨルガリアのレベルアップはなかった。
レベルカンストが99だからなのか、スケルトンと騎士ゾンビ任せで直接殺していないからかは不明である。
《名前 ヨルガリア
種族 リッチ 年齢 ? 性別 男
クラス ネクロマンサー レベル 99
スキル 【古代語】【レクタリス地方語】【礼儀作法】【カリスマ】
【基本魔法】【闇魔法】【時空魔法】【仙術】【死霊魔術】
【魔力制御】【同時発動】【叡智】【スケルトン作成】
【スケルトン強化】【クライニアとの絆】》
ペアリングで経験値を分けたルマニールは?
いつの間にかレベル50になっていました。
スキルの増えるレベル60は遠いね。
《名前 ルマニール
種族 シャドウストーカー 年齢 ? 性別 ?
クラス アサシン レベル 50
スキル 【影潜み】【影渡り】【影の刃】【気配察知】【罠感知】【多刀流】
【不眠不休】【クライニアとの絆】》
それじゃ王都までしばしの旅をしようか。
* * *
王都の門前に死体を積み上げた私は、迷宮帰還で帝国に戻った。
ゴーレム馬を走らせては街で一泊するということを繰り返していたわけだけど、その旅の間、特筆すべき事件は何も起きなかった。
街道を進めば魔物との遭遇はそもそもまずないし、銀ランク冒険者である私に妙な絡み方をする輩もいない。
宿で食事をしてすぐに部屋で休むわけだから、そもそも人と絡むということが少なかったのもあるけど。
まああの死体の山を見て、キウス王国がどんな動きをするかは気になるところだけど、それはまた数日後の話だ。
とりあえず強行軍もしたし、今日は休日にして明日からイフリート迷宮の攻略を再開しよう。
というわけでブラックスミスになって師匠のもとへ。
「おう、なんじゃ久々じゃのう」
「そうですね。ちょっと王都まで足を伸ばしてまして」
「そうか。ところで蒸留器じゃが、出来上がっておるぞ。場所を取るから引き取ってくれ」
「ああ、そうですね。それでは引き取ります」
私は店の方に並んでいた蒸留器を〈ストレージ〉に仕舞った。
温度計は私の方で用意しなければならない。
蒸留所も設置しないとなあ。
まあそれはそれとして鍛冶だ。
しかしいざ鍛冶をしようとすると、師匠が話しかけてくる。
「ところで、宿の方が一杯らしいぞ。聞いておるか?」
「え? そうなんですか?」
「うむ。外で野営しておる者もおるようじゃな。食事処は利用しておるらしいが」
「なるほど……増築すべきかなあ」
増築して従業員を増やすのは簡単なことだ。
しかし野営する者まで出るとは、一体、何事か。
「食事処の料理が美味いのと、酒は値が張るが美味いのが揃っておるじゃろ? ここから迷宮まで距離は街からとそう変わらん。拠点を移した冒険者がいるそうじゃ」
「ほうほう。情報通ですね、師匠」
「毎日、食事処に行っておるからな」
なるほど、師匠が自炊をしている姿は想像できない。
しかしこうなってくると、宿屋だけじゃなく食事処も増築した方がいいかもしれないな。
夜になったら様子を見に行こう。
さあ鍛冶の時間だ。
鋼の剣を打ちまくるぞ。
……。
いや久々に数を打ったわ。
それでもまだ魔法の武器は出来上がらないのだけど。
さて夜は夕食を食事処で取ることにした。
ミアラッハと連れ立って、食事処へ。
考えてみれば、初めてだな、利用するのは。
中は活気があった。
席はほとんど埋まっている。
良かった、キャパシティはオーバーしていないらしい。
いや、従業員は忙しそうだけども。
カウンターにふたりでかける。
「おやマスター。いらっしゃいませ」
「うん。利用者が増えているみたいだから様子見を兼ねて来たんだ。何か困ったこととかある?」
「そうですねえ……従業員がサキュバスでしょう? 勘違いした男がちょっかい出してきて仕事の邪魔になるところはよく見ますね」
あちゃあ。
やっぱり娼館と食事処は別にすべきだったのか?
「まあ従業員の方は心得てますので、夜遅くになって客が引いた時間からしか男漁りをしないので、店自体は回っていますね。あ、お酒の在庫が少なくなっているので、後で出していただけるとありがたいです」
「お酒の件は了解。店は回っている、か。なら大丈夫か」
周囲に気を配りながら食事を取る。
銅ランクより、銀ランクの方が多い。
金ランクはさすがに見ない。
高級酒を頼める余裕のあるのが、銀ランクくらいからということだろうか。
迷宮への移動手段を自前で持っているというところもあるかもしれないね。
宿屋の厩に馬が繋がれていたし。
そういえば冒険者ギルドができたけど、迷宮への乗合馬車の運行はどうなっているのだろうか。
向こうでやってくれると楽だから、しばらく放置してみるかな。
のんびりと食事を摂り、城へと戻る。
その頃には宿屋で部屋を取れなかった連中が野営をしていた。
いずれは大工が来てくれると、助かるのだけど。
そんなことを考えて今日の成果を確認する。
よし、ブラックスミスのレベルが40になっている。
新しいスキルが増えるぜ。
【?】の中の文字がクルクル回転する。
結果は?
【鎚技】だ。
ハンマーで戦うことはないけれど、これ鍛冶の腕前が上がったりするのだろうか。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス ブラックスミス レベル 40
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】
【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】【人形使役】【剣技】
【剣術】【槍技】【槍術】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】
【霊鎧】【素手格闘】【投げ】【関節技】【対人戦闘】【気配察知】
【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】
【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】
【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【俊足】【気品】【美声】
【カリスマ】【幸運】【指揮】【鼓舞】【福音】【光翼】
【創世神信仰】【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】
【ヨルガリアとの絆】【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】
【熟練度20倍】【転職】》
よしモンクに転職して寝よう。
棚の上にはミアラッハが彫った兵棋演習の駒が並んでいる。
なかなか上手だ。
ただ色味がないのが残念か。
各種顔料を出しておいた。
翌朝、ミアラッハが喜んでいたので、やはり顔料を出して正解だったなあと思いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます