え、これアタリじゃね?

 今日はドレイク迷宮の第九十階層を目指す。

 遂にゴールが見えてきた。

 迷宮のラスボスを倒しても、特別なことはない。

 迷宮が初踏破されたときには、何らかの報酬が迷宮から出るらしいけど。


 低難易度ゆえに何度も攻略されている迷宮だから、今更なにかあるわけでもない。

 ただ自己満足のために攻略をする、と決めただけだ。

 冒険者だもの、ひとつくらい迷宮を攻略しておきたいよね?


 例の瞬殺コンボに、新たに武器伸長が加わった。

 魔法武器化した〈マナジャベリン〉が伸びることで、威力が増大したのだ。

 思わぬ効果に気を良くした。

 いやほんと、便利なスキルだったんだね。

 習得したときは、なんじゃこりゃ、と思ったものだけど。


 道中、危うげなく第八十五階層に辿り着いた。

 ここは前に冒険者たちが並んでいる。

 どうも中ボスのシルバーラプターがいいお金になるらしく、定期的にボス狩りをしに来る冒険者パーティがいるらしい。

 仕方ないので、ミアラッハと待つ。

 小一時間ほど待たされて、ようやく私たちの番になった。


 シルバーラプターは全身が銀でできた大きめの鳥だ。

 ゴーレムに分類されるらしく、魔法が効きづらい。

 また全身金属なので、硬いのも特徴だろうか。

 もっとも、ミアラッハの魔槍の前では銀など柔らかな金属でしかないが。

 楽勝でした。


 破壊したシルバーラプターを〈ストレージ〉に入れて、宝箱を待つ。

 すぐに現れた。

 罠はなし、鍵もなし。

 中身は?

 盾でした。

 使わなさそうだなあ。


 奥の扉を進んで、第九十階層を目指す。

 ゴール目前ということで、ミアラッハもテンション高めである。

 魔物が可哀想になってくるが、雑魚戦なのでササっと終わらせてどんどん先に進む。


 第九十階層、中ボス部屋前。

 ここは第八十五階層とうってかわって人がいない。

 とっとと中に入って中ボスを倒そう。

 ここには石化ブレスを吐くコカトリスがいる。

 精神属性ではないため、食らったら解呪していかなければならない。

 面倒だ。


 なのでミアラッハとふたりで〈死棘〉投擲して倒した。

 手段を選ばなければ、これが効率いいんだよね。


 もっともこれに頼りっぱなしになると、ミアラッハは腕が鈍りそうで不安になるとは本人の談。

 確かに、ミアラッハは槍技の熟練度を気にする必要があるだろう。

 私は魔法使いだし、武器は剣なので気にしないが。


 宝箱には爆散の罠が仕掛けられていた。

 これ機械式の罠らしいので、スカウト用ツールでチマチマ解除していく。

 よし、解除終了。

 中身は?

 指輪がふたつ。

 はて、ペアリングかなにかかな?


 手を繋いで転移魔法陣に乗る。

 いよいよ迷宮のラストが見えてきた。

 ラスボスはドレイクだと分かっているので、もう倒したようなものだと思っている。

 初の亜竜だが、所詮は亜竜。

 空を飛ぶのも空歩と光翼がある私たちにはアドバンテージにならない。


 迷宮の攻略を楽しみにしながら、街へと帰還するのでありました。


 * * *


 冒険者ギルドの鑑定師の前に並ぶ、迷宮品。

 今回は、カバン、靴、グリーブ、ベルト、盾、髪飾り、兜、布、謎のインゴット、ペアリングだ。


 順番に行こう。


 まずカバン。

 これは時空魔法がかかっている中身の空間が拡張されているマジックバッグだ。

 私には〈ストレージ〉があるし、ミアラッハにはウェストポーチがある。

 売却することにしたら、ギルド職員が大喜びで金貨を用意してくれた。

 売値は金貨100枚だ。

 容量が大きいため、この価格になったとのこと。

 買う方は一体、幾らでこれを買うのかな?


 次に靴。

 前回ふたつ出た運動靴だ。

 もう不要なので売却。

 金貨3枚になった。


 次にグリーブ。

 金属製のすね当てだ。

 呪われているらしく、時折、泥沼に足を取られるようにして動かなくなるらしい。

 怖い。

 特性自体は走行速度上昇なのだが。

 でもカースドナイト用の装備としては優秀なので確保。


 次にベルト。

 チャンピオンベルトという名の普通の細いベルト。

 名前は上級クラスのチャンピオンから取られたようだ。

 格闘のダメージ上昇の特性を秘めている。

 私用に確保だ!


 次に盾。

 これも呪われているらしく、時折、視界が真っ暗になるという厄介な呪いがあるとか。

 特性は全属性耐性。

 カースドナイト用に確保だ。


 次は髪飾り。

 なんと身につけると【暗視】できるようになるスグレモノだ。

 私かミアラッハ、どちらにも美味しいので確保。

 相談の結果、ひとまず私が身につけることにした。

 いきなり暗くなった時に、〈ライト〉や〈ナイトウォーカー〉を使える私の方が優先順位が高いからだそう。


 次に兜。

 ここに来て呪い装備が続いている。

 これは顔全体を覆う仮面付きの兜で、デカい角がついている。

 呪いの内容は混乱。

 たまに味方が敵に見えるとか。

 なにそれ怖い。

 特性は破壊不能。

 優秀なカースドナイト用の装備だ、確保!


 次は布。

 白いマギシルクで、染色されていないものだ。

 王侯貴族の花嫁衣装に用いられる最高級品の布ということで、高値がついた。

 金貨100枚なり。


 次は謎のインゴット。

 赤いので何なのかと思ったら、ヒヒイロカネだそうだ。

 あれ、それってオリハルコン並みの伝説の金属じゃないの?

 どうやらその認識で合っているらしい。

 鑑定師も見るのは初めてとのこと。

 日頃お世話になっている師匠のお土産にしようっと。


 最後にペアリング。

 これは片方が得た経験値の一割を、もう片方のリングの持ち主に与えられるという代物らしい。

 得た経験値は減ることなく、もう片方のリングの持ち主に与えられるので、実質、経験値が一割増えることになる。

 非常に強力な効果なので、需要が高い。

 もちろん確保しておく。

 私とシャドウストーカーのルマニールが嵌めることで、ルマニールのレベリングができるようになる。

 美味しいです。


 今回は私用のアイテムを多く確保した気がするね。


 宿に戻って、自分のステータスを確認する。

 よし、トリックスターのレベルが28になっている。

 スキルが増えるぞ!

 まあトリックスターだし、あまり期待できないけど。

 新しいスキルは?

 【幸運】。

 え、これアタリじゃね?

 だってこれ、宝箱の中身とか良いものになるんでしょ?

 ヤバイよこれ。


 テンション高めのまま、転職を起動する。


《【転職】

 トリックスター(レベル28)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル35)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 メイド(レベル1)

 バード(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 カースドナイト(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)

 エンペラー(レベル20)》


 トリックスターの派生クラスのバードが増えている。

 下級クラスだが、魔曲や呪歌を習得している暇がない。

 双方を習得しておかないと、レベル20のスキルで習得する恐れがある。

 ここはチャンピオンのレベル上げをしておこうかな。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス チャンピオン レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【仙術】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】

     【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】【多刀流】

     【武器伸長】【素手格闘】【関節技】【気配察知】【罠感知】

     【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】

     【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【魔法武器化】

     【魔力強化】【怪力】【俊足】【幸運】【光翼】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 よし、明後日の迷宮探索では、格闘で戦う時間を取ろう。

 なおペアリングは私とルマニールにつけた。

 これでルマニールのレベルが上昇するようになる。

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