エンペラーとは一体……うごご。

 昨日はあれから鋼の剣を何本か打って、宿に戻った。

 さあ冒険者ギルドを覗いてから、ドレイクの迷宮の続きだ。


 特に目ぼしい依頼もないので、迷宮に向かう。

 今日は第六十階層からスタートだ。


 クラスはエンペラー。

 現在のエンペラーのレベルは8だ。

 前回の迷宮攻略ではあまり戦っていなかったから、経験値が少なかったというのもあるが、上級クラスなので必要経験値が多いというのもある。

 今日はルマニールには気配察知と罠感知に集中してもらうこととし、魔物の半分を私が倒すことに決めた。

 ルマニールのレベリングはまた考えよう。


 〈マジックハンド〉〈マナジャベリン〉〈死棘〉の瞬殺コンボで魔物を屠っていく。

 ミアラッハは地道に戦っているが、魔槍が強いのでサクサク貫いていく。


 宝箱を回収していきながら、第六十五階層の中ボス部屋にやって来た。

 待ち人もいないので、部屋に入る。

 ここの中ボスはオーガグラップラーとレッサーオーガ五体だ。


 オーガグラップラーはミアラッハに任せて、レッサーオーガをまとめて瞬殺コンボで倒す。

 一対一になったらミアラッハが負けることはない。

 槍の間合いを保ちながら、オーガグラップラーの接近を許さずに完勝してみせた。


 宝箱には転移の罠がかかっていた。

 〈ディスペル〉してから開ける。

 中身は?

 杖だった。


 迷宮産の武器は特性がついていて強力だから、使えるかもしれない。

 思えば魔法ばかり撃っているのに、杖を持ったことがない。

 良い効果があると嬉しいな。


 扉をくぐって、先に進む。


 雑魚はもう相手にならない。

 ときどき私が撃ち漏らすことがあるけど、二発目で撃破できるので問題はない。


 第七十階層、中ボスの部屋前。

 特に人はいないので、扉を開けて中へ。

 ここの中ボスは、レイスだ。


 魔法を〈カウンターマジック〉して打ち消し、ミアラッハが魔槍で貫いて終わり。

 霊体で魔法使いだから、相性次第じゃもっと苦戦する相手なんだけどね。

 魔槍は明らかに魔法の武器なので、普通にレイスにダメージを与えられるのが大きい。


 宝箱が出現する。

 罠はなし。

 開けると?

 中身はティアラだった。

 大きな宝石がついている。

 高値で売れそうだ。


 手を繋ぎ、転移魔法陣で第一階層へ戻る。

 今日は順調だったなあ。

 もうドレイクの迷宮の攻略が見えてきている。

 このまま何事もなく攻略できたら、数日は休暇にする予定だ。


 その後はどうするか決めていない。

 難易度を上げた迷宮の攻略に乗り出してもいいし、別の街へ行くのもいい。

 ただし師匠のもとで魔法の武器が打てるようになるまでは別の街へは行けないから、やっぱ迷宮攻略が濃厚かなあ。


 私たちなら、問題なくもうひとつの迷宮も攻略できるだろう。

 それまでには、魔法の武器が打てるようになっているといいのだけど……。


 * * *


 鑑定師の前に迷宮品を十個置く。

 いつもどおりだ。

 鑑定師も諦観の域にいる。


 ティーカップ、枕、宝石、酒瓶、杖、筒、種、コイン、ティーカップ、ティアラ。


 まずふたつのティーカップ。

 これは以前にも入手したことのある無毒のティーカップだった。

 相変わらず王侯貴族に需要のある品で、ひとつ金貨50枚で売れた。


 次に枕。

 これも以前、入手したことのある至高の寝具のひとつ。

 ミアラッハ用はすでにあるので、私用に確保した。


 次に宝石。

 大きなサファイアだ。

 特に光を当てると白い六条の光を発するスターサファイアである。

 金貨20枚になった。


 次に酒瓶。

 以前も入手したことのある『竜の吐息』だ。

 師匠へのお土産に最適なので、確保しておく。


 次は杖。

 〈ネクロマンシー〉で作成したアンデッドが強化されるというもの。

 これはネクロマンサー垂涎の品だ。

 ちょっと期待ハズレだったが、リッチのヨルガリアに最適なので確保。


 次は筒。

 正確には筒状の入れ物で、中身は茶葉だった。

 迷宮産の茶葉は高級品であり、貴族に人気らしい。

 金貨2枚になった。


 次は種だ。

 以前にも出た果実のなる木が数日で生えるというシリーズだ。

 今回は桃である。

 リンゴほどじゃないが、桃も人気がある。

 金貨10枚になった。


 次はコインだ。

 なんでも古代王朝の白金貨らしく、稀に迷宮から出るとのこと。

 コレクターがいるので、金貨10枚ほどで取引されているらしい。

 もちろん売却した。


 最後にティアラ。

 これは闇魔法の精神効果を無効化するというスグレモノだ。

 防具にしておくには華美すぎるため、売却する。

 宝石の大きさ、ティアラの美術的な価値、王族に望まれるだろう性能。

 確実に一級品だとのことで、金貨100枚になった。


 ううむ、大儲けである。

 素材を売却した金額が誤差に思えてくるほどだ。


 ともかく宿に戻ることにした。


 リッチのヨルガリアを召喚して杖を渡す。


「マスター。これほどの迷宮品はなかなかありませんぞ」


「だよね。ネクロマンサーのヨルガリアなら使えると思って」


「ありがたいことです。大切に使わせてもらいます」


 用事が済んだので送還する。

 しかしシャルセアといいヨルガリアといい、強すぎて呼び出す機会がない。


 おっと、エンペラーがレベル20になっている。

 新しいスキルが増えるね。

 グルグルと文字が回転する。

 果たしてエンペラーで習得できるスキルは?

 【光翼】というスキルだ。

 どうやら光の翼を生やして空を飛ぶことができるらしい。

 エンペラーとは一体……うごご。


 さて転職を起動して次のクラスを決めよう。


《【転職】

 エンペラー(レベル20)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル1)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル28)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 カースドナイト(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)》


 特に増えたクラスはない。

 下級クラスはノーブル、ランサー、マーチャント、メイド、トリックスターが残っている。

 派生クラスがバードだと判明しているトリックスターになっておくか?

 正直なところ、トリックスターもバードも欲しいスキルが来るとは思えない。

 ここはランサーにしておこう。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ランサー レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【仙術】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】

     【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】【多刀流】

     【素手格闘】【関節技】【気配察知】【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】【同時発動】

     【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】

     【俊足】【光翼】【創世神信仰】【シャルセアとの絆】

     【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】【経験値20倍】

     【熟練度20倍】【転職】》


 よしよし。

 空を飛ぶことができるようになったのは大きい。

 空歩の方が使い勝手が良さそうだけど、あれはミアラッハのチートスキルっぽいしね。

 あとは風魔法に【フライト】があるから空を飛ぶことはできるのだけど、あれまっすぐにしか飛べないらしいし。

 光翼はその辺、自在に方向転換ができそうだ。

 迷宮で試してみようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る