ただ私の限界というものはある。

 落ち着いてきたので、ステータスを開いてみることにした。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス グラップラー レベル 31

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【?】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 おお、グラップラーが20レベルを越えているどころか、30を越えている!

 さすがにオーガとレッサーオーガ二体は経験値が豊富だったらしい。

 

 じゃあ新しいスキルを選択して、と。

 グルグル文字が回転して、【?】は【素手格闘】になった。

 素手による格闘に補正が入るスキルだ。

 今後、武器を入手しても万が一のときに使える。

 そんなに悪くはない気がするぞ。

 

 転職の内容も確認しておこうかな。

 

《【転職】

 グラップラー(レベル31)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル1)

 スカウト(レベル1)

 プリースト(レベル1)

 メイジ(レベル22)

 アルケミスト(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 ウィザード(レベル1)

 ハーミット(レベル1)》

 

 チャンピオンはグラップラーの、ウィザードはメイジの上級クラスだ。

 しかしハーミットは聞いたことがない。

 並び順からして上級クラスなのは間違いないと思うが。

 ハーミット……隠者か。

 ちょっとなってみようかね?

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ハーミット レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【素手格闘】【経験値20倍】【熟練度20倍】

     【転職】》

 

 なって分かったことがある。

 まず格闘に補正がつくこと。

 そして仙術という系統外魔法に補正がつくらしい。

 なるほど、ハーミットって仙人という意味なのかな。

 

 ただ現状、仙術に関する情報が一切、私の中にない。

 なのでハーミットはお預けにして、スカウトになっておこう。

 こちらは気配察知と罠察知に補正がある斥候系の下級クラスだ。

 パーティにひとり欲しいクラスである。

 今はソロなのでかじっておいて損はないだろう。

 

 さてオーガとレッサーオーガの死体、どうするかなあ。

 剥ぎ取り部位は角だと思うけど、ちょっと自信がない。

 

 扱いに困りそうだし、捨てていくのも手ではある。

 

 〈ストレージ〉に入れていくのはなんとなく嫌だ。

 死蔵しそうだし。

 

 よし捨てていこう。

 決定!

 

 私はゴーレム馬に飛び乗って、先に進むことにした。

 ただ頭の片隅で、有名な攻撃魔法を思い出しながら。

 今回みたいなギリギリの戦いは嫌だからね。

 

 * * *

 

 マサフレイ子爵領に入った。

 ここは男爵領より広いが、まあ田舎なのは変わらない。

 

 とはいえ領都ではない大きな街がある。

 そこならば知り合いにも遭遇することはないだろうから、路銀稼ぎにしばらく滞在するのも悪くないかもしれない。

 

 ゴーレム馬で街道に戻ろうとすると、街道を進む荷馬車と護衛らしき人影が歩いているのが目に入った。

 目立つのを避けるため、ゴーレム馬を土に戻して、しばし時間を潰す。

 雑草を集めて緑色の布を三枚作り、普通の布を錬成する作業だ。

 布は幾らあっても困ることはないだろう。

 やはり錬成時に気合を入れることで、デザインはだいぶまともになった。

 ただ私の限界というものはある。

 クリーム色の布地に緑色のストライプが入った布。

 はい、何の変哲もないけど、まだら模様よりマシですね。

 

 とりあえず出来上がった布は〈ストレージ〉に入れておいた。

 売り物になるとも思えないのでね。

 

 さて、馬車はもうだいぶ進んだ頃かな?

 私もそろそろ街道に入って街を目指そう。

 

 のんびりと街道を歩く。

 目指す街はマサフレイ子爵領の誇る大都市で、領都ではないから知り合いもいないという好環境だ。

 

 父からの追手は退けたが、レブリック家から父に連絡が行った可能性が高く、再度の追手が放たれている可能性も考えられる。

 そうなるとこの都市も安全とは言い難い。

 とはいえ騎士が相手だと上手く手加減できそうもない。

 

 早めに便利そうな魔法を思い出すか、書物を購入するべきだろう。

 

 冒険者タグを提示して、街に入る。

 栄えている街というのは行き交う人々にも活力があるように思える。

 さてまずは宿を取ってから、今日くらいはゆっくり休もう。

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