第一章 第2話 心の叫び
「バクバクガツガツバクバク」
僕は目の前に並んだ料理にがっついていた。
「ふはははは。そんなに急いで食べると喉詰まらせるぞ」
シエンさんは豪快に笑った。
僕はシエンさんと一緒に温泉に入った後、この飲食店で食事をしていた。
「うっ、ごほごほ!!」
「あ~、ほら言わんこっちゃねえ。ほれ、水飲め水」
「ゴクゴクゴク……ふう...」
「大丈夫か?」
「は、はい」
あまりのおいしさにがっついてつい喉を詰まらせてしまった。だってこんなおいしい料理今まで食べたことがなかったから。
「食って少ししたらギルドに行くぞ」
「ギルドって.........冒険者ギルドのことですか?」
「おお、なんだ知ってんのか」
「まあ....」
常識だし...あとこの人見た目からして冒険者って感じだし...
「ところで君親とかは?なんかつらそうだったからそのまま連れてきちまったけど。あんだけボロボロだったから迷子ってわけじゃなさそうだし、家出とか?」
シエンさんは僕のことについて聞いてきた。どうしよう.......話そうかな.....
「えっと........その.......」
「その様子だと話しにくい何かか?」
迷う。シエンさんの言う通り話しにくい。いざ話そうとするとつらい過去を思い出して泣きそうになってしまう。
「いや.........まあ......」
「そうか……じゃあ話せ」
「え?」
シエンさんは急に真剣な表情になって僕のことを話せって言った。
そしてこう言った。
「子供がつらいことを一人で抱え込むな。小さく弱い子供を守るため、力になり支えるために俺たち大人がいる。話しているうちに泣きそうになったらおもいっきり泣け。そうすりゃきっと、今まで心に溜め込んだものが一気に出てきて、少しは楽になるから」
とても安心するような、柔らかい笑みを浮かべながら......
「……僕は――」
シエンさんの優しい笑顔を見て僕はいつの間にか話し始めていた。
山奥の小さな村に住んでいたこと。その村が魔物の大群に襲われてその時にお父さんとお母さんが死んでしまったこと。僕は森の中を必死で走って逃げたこと。誰かに助けを求めても、殴られたり、蹴られたり、石を投げられたりしたこと。ゴミを漁って食べられるものを探したり、水たまりの水や泥水をすすって喉を潤したこと。
そう話しているうちに、つらい過去を思い出し、僕は俯いて涙をポロポロ流していた。
「うう、ぐす...ひっぐ...」
「……」
シエンさんは何も言わない。僕が話し終えて数秒後、シエンさんは突然立ち上がり、僕のそばに来た。そして、優しく僕を抱きしめる。
「そうか.......そうか......よく話してくれた」
とても優しい声で...
「今まで、本当に......本当によく、頑張ったなぁ。アリステア.....君は、凄い子だ」
シエンさんはそう言った。
温かい.....こんなに温かいものを感じるのはいつ以来だろうか。
シエンさんの温かさに包まれて、僕は.....僕は.....
「う、うう、うわあああああああああああああん!!」
おもいっきり泣いた。
心の中に溜め込んでいたもの全てを、シエンさんにぶつけるように。
「うう、ゔう、ああああああああああ!!」
他の客や店員達が何事かと僕のことを見てくる。それでも僕は周りの視線を気にせず声を荒げて泣いていた。
シエンさんは僕のことを抱きかかえて店員のほうに歩いていく。
「店員さん、これ」
「え!? き、金貨5枚って...お、お釣りは」
「釣りはいらねえ。子供泣かして他の客に迷惑かけた迷惑料ってことで受け取ってくれ」
「で、でも....いくら何でもこんな大金」
「料理うまかった。ごちそうさん」
「あ、ちょっ」
シエンさんはそう言って、未だに号泣したままの僕を抱きかかえて、店を後にした。
――――あとがき――――
どうでしょうか?
アリステアが今まで溜め込んだものをおもいっきりシエンにぶつける場面を書いてみました。
感情を爆発させる描写を文字で表すって中々難しいですね。
少しでもシエンかっこいい~と思った方は、
↓の『★で称える』で応援よろしくお願いいたします。
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