ノッキン・ノン・ヘブンスドア
その日のスタジオ内は静寂に包まれていた。みな表情が暗い。店員さんまでスタジオに来ている。
「俺の葬式かよ」
おじさんだけ笑っている。そんなおじさんの肩に店員さんが手を乗せる。
「りゅー。こいつらの気持ちだ。茶化すなよ」
おじさんは真顔になった。
「ヘブンスドアを頼む。俺が一番好きな曲だ」
ケイ君が弾くイントロが悲しく響く。
僕たちはいつもよりボリュームを上げて、ガンズ・アンド・ローゼズを奏でた。
精一杯高音を出すと、おじさんの表情が和らいでいく。
曲が終わると、みんなが拍手をした。ケイ君がおじさんに言う。
「今すぐ死ぬわけじゃないんだろ?この曲なら声変わりしても歌って変じゃないぜ?」
おじさんは首を左右に振る。
「1オクターブ下げたハード・ロックっていうのは無様だ」
僕も怒りをあらわにした。
「高音は鍛えれば伸びるんでしょ?頑張るから、生きてよ!」
おじさんが初めて泣いた。
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