2 襲撃メンバーの人選理由

「それは現在のこの罪を覆い隠すものではないのか?」

「いいえ、私はその際にあの男に目をつけられ、七年の間不本意ながら囲われていたのでございます」

「不本意だったのか?」

「十三の子供を見目がいいからと手込めにすぐにする男に好感など持てる訳がありません。

 それに、その折りにこの仕事における私の同僚は、私と、もう一人をのぞき皆その場で消されました」

「それは殺された、ということでいいんだな。詳しく」

「私達は確かに襲撃時子供でしたが、訓練はそれこそ五つ六つの頃から受けております。そして用途に応じて、人員を用意する訳ですが、その時の依頼者はどうも若い者ばかりを必要とした様です。強すぎない使い手を」

「つまり?」

「私達は、指定された場所に案内され――それが、当時の妾妃、ラグネイデ様の館であったことは後に知りました。

 そこに居る者達を全て殺せ。それが私達への指示でした。

 ただし、この時一人の少女が逃げ出したことには気付くことができませんでした。

 それこそ、我々はまだ本当に『若手』『ひよっこ』でしかありませんでしたので。

 通常なら、ベテランと若手は組ませて仕事を行うものです。ですがこの時は若手のみ、でした。

 そしてミスをしたことにより、我々は皆その場で処分されることとなったのです」

「つまり、元々計画を知った者を消すことが前提だったと」

「今となってはそう思います。当時はまだ本当に幼かったため、何故自分達が殺されないとならないのか判りませんでした。

 ですが自分達の総勢が十名だったのに対し、取り囲み処分しようとする手の者は三十名がところ。

 いくら我々が暗殺者として訓練された者だったとしても、大の男、正規の軍人三十名に敵う訳がありません。

 八名はその場で殺され、妾妃様の館の近くの森に浅く穴を掘って埋められました。 

 おそらく、血の臭いを嗅いだ獣に掘り出され易いくらいの埋め方だったと思われます」

「で? 其方が生き残っているのは、第二王子の欲望からだったとして。

 もう一人は何故生き残ることができたのだ?」

「それが私の条件だったからです」


 条件、とアンネリアは繰り返した。


「第二王子フットサムは」


 敬称も何もこの女は付けないな、とふとアンネリアは思う。

 王太子、が第二王子になり、ついには名前を呼び捨てに。

 それだけ憎かったのだろう。


「第二王子は、どうしたのだ?」

「同僚と共に死ぬという私に対し、自分のものになるなら此奴を逃がしてもいい、と私の恋人を示したのです」

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