偏り
星ぶどう
第1話
1学期の最後のホームルームが終わった。これは夏休みが始まったと同時に友との別れの瞬間でもあった。明日から俺の親友、中村が北海道に飛び立つ。
「よ、あのさ…ありがとな。楽しかったよ。」中村が俺に話しかけてきた。
「おう、向こう行っても頑張れよ!」俺は涙を堪えながら力強く言った。
「うん、ありがとう。じゃあ俺、担任に挨拶に行くから。またな。」
中村はそう言うと振り返らずに教室を出て行った。中村が見えなくなった後、俺は我慢していた涙腺を解放した。寂しさを抱えながら俺の1学期は終わった。
2学期の最後のホームルームが終わった。これは冬休みが始まったと同時に友との別れの瞬間でもあった。明日から佐々木と鈴木が宮崎県に飛び立つ。2人の父親は同じオフィスで働いていて、同時に同じ場所への転勤が決まったらしい。なんたる偶然。まあでも俺はあまりこの2人と喋ったことがないからそんなに寂しくはなかった。
3学期の最後のホームルームが終わった。これは新しい年度への期待を持つと同時に友との別れの瞬間でもあった。今度は島村さん、野田さん、沼田の3人だ。島村さんは沖縄県に引っ越し、野田さんは秋田県、沼田は宮城県だ。野田さんとだけは部活が同じだったので、最後に少し別れの挨拶をした。
それにしてもここ最近転校する人が多い気がする。1年で6人もいなくなるなんて異常だ。実はこの現象はうちのクラスだけ起きているわけではない。隣のクラスでは1年で4人転校して行き、2組なんて曽祖父の時からこの町にずっと住んでいたあの清水が鹿児島県に引っ越すらしい。俺は世界で何か大きなことが起きるような気がした。一体何が起きるというのだろう?
上履きや机の引き出しの中にずっとためていたプリントを抱えながら俺は家に帰った。
「ただいま。」
「お帰り。そういえば向かいに住んでる中原さん、青森県に引っ越すらしいわよ。」お母さんがテレビを見ながらそう言った。
また引っ越しか。何がどうなっているんだ。俺には分からなかった。
だがその時テレビの報道番組で興味深いことを言っていた。その内容はこうだ。
「えー地学の専門家によりますと、最近地球の磁場が強まっているそうです。」
偏り 星ぶどう @Kazumina01
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