第30話 虹がもし見られたら

虹がもし見られたら、この恋はきっと終わりのない旅になる。


そういいながら、あなたはハンドルを切った。このカーブを抜けた先には、青く抜けた空が広がっていて、さっきまで雨は降っていたし、今のこの日差しならきっと虹が綺麗に見えるはずだし。


見たいような見たくないような気持ちがないまぜになって、私はわざと視線を横へと逸らした。


助手席の左、すぐそこは崖になっていて、鬱蒼と茂った木々たちで下は見られないし、もし落ちたらどこまで落ちるのかなんて見当もつかなかった。


虹が出ていて欲しいような、もしかしたらそうでないような気がして、あなたのハンドルを握る手が少し汗ばんだ。


終わりのない恋とは言ったものの、はたして有り得るのかという点において些か疑問が残っているし、本当にこの相手が自分にとって唯一無二と言えるのかもわからない。


一羽の大きな鳥が優雅に空を舞っている。私はその自由に憧れた。


私だってそれ相応の自由を謳歌して今ここにいるわけだし、そろそろ身を固めなさいと言う母の言葉だって耳にタコができるくらい残っている。


ブレーキの効きが少し遅いような、いつもより重いような気が、あなたはしている。


結婚は勢いだ、と酔った友人が管を巻いていた。あんなにも多くの、そして面倒臭い手順を律儀に踏んでおきながら何が勢いだ、と鼻で笑った日を思う。



いよいよ虹の如何がはっきりする、と2人は同時に感じた。

あの道の向こう、あの空の向こうに2人の命運を委ねた虹が待っているのかいないのか。

2人はこれまで共に歩んだ時間を振り返った。そして、虹が示すその先を思い遣った。

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