泉の姫と600年後の君と…

@Mese

第1話 約束の姫君

神は告げた。


"泉の恩恵を受けたくば、祝福の姫を捧げよ"


建国直後、初代の王はそう神の声を聞いた。城の後方にある森の中に動物達の水場にしかならなそうな小さな泉がある。

王は半信半疑ながらも姫の誕生を待った。一人目の姫が生まれた日、王は姫を泉に連れて行ったが樹々がそよぐだけで泉は特に何の変化や兆しを見せない。

肩透かしを食った王はいつしかそのお告げを忘れて、更に3人の王子と2人の姫をもうけた。

一方で隣国の勢力は強まり、いつ攻め込まれてもおかしくない状況に加えて悪天候による水難もあり国は一代で滅ぶ危機に晒されていた。

現実から逃げるかの如く、王は手当たり次第に側室を作り次々と子供を産ませた。


ある夜、一人の側室が大きなお腹を抱えて息を切らしながら森へと走っていた。

子どもが増え過ぎた王室では王子であろうと姫で無ければ母子共に殺されてしまう。

例え姫であっても祝福の姫でなければ結果は同じだ。

王は狂い、かつて聞いた神の声とやらに囚われている。

無理矢理あの暴君の側室にされた挙句、大事な我が子を殺されるくらいなら…と腹の大きな女は森の先へと逃げる。

しかし、無惨にも泉の手前で産気づいてしまったのだ。

予定では出産はあと10日くらい先のはずだったが、無理が祟ったのか女は経験した事のない強烈な腹の痛みと共に破水したのだ。

女は痛みを和らげる為に泉へと入り目を閉じて祈った。


"どうか、この子の命を救って下さい

もし、本当に神の奇跡があるのならば…"


すると、泉は眩い光を放ち母子を呑み込んむ。追手の王と騎士らが泉に着くと、そこにはお産で息絶えた側室の姿と、彼女に抱かれた赤ん坊がいた。

騎士が倒れた側室の腕から赤子を取り、王に受け渡すと王は歓喜に満ちた小さな声を漏らした。

産まれた赤ん坊は美しい銀色の髪と眩く光る肌を有していた。

まさに神の祝福を受けた姫だと歓喜したのだ。


--大陸の中心に位置する小さな国、リノアヴェール。

温暖な気候と豊かな大地の恩恵を受けて育つ農産物と国境近くの鉱山から取れる金のおかげでリノアヴェールは小国ながらも栄えていた。

奇跡の泉の庇護の元、花は咲き誇り国民の笑みが絶えない幸福の王国。


神は告げた


"泉の恩恵を受けたくば、祝福の姫を捧げよ"




"約束を交わすその日までー…"

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