第23話 アカデミーについて
風呂から上がってスッキリした所で今後の話となった。
アモネスが何度も何度も申し訳ないというので、もう言わないで欲しいと伝えた。
ただ、念押しとして再確認し、元の世界に帰れない事が分かり、それを踏まえて今後について話をするとした。
アモネスは元々召喚の対価に差し出す予定だった女性4人のうちの1人だ。
彼女は晃司が何を言ってもイエスマンだ。
ライラに聞くと幼少の頃より自分が将来夫となる勇者を召喚する事が使命だと言われ続けられていたと。
過去の勇者が如何に素晴らしく、そのような勇者に愛されるように女を磨き、力を付けるのだと、散々勇者を美化する刷り込みが行われており、彼女の中では勇者の妻になる以外の道は見いだせないらしい。
だからその優位な立場を利用して手籠めにしたらちょん切るわよと脅された。
その場合、寝込みを襲うし、殺気もないからまず切られるまで分からないと。暗殺者の加護持ちだそうだ。
先ず教えて貰ったのは、先の話の3人の女性にはまだ勇者が発見された旨を伝えていないと。
ラミィの話だと確信はしたが、俺と話しをしないと確定ができないので、彼女達には確定後に話す事にしていた。
それとアモネスとその3人も王立アカデミーのエリート推薦組に入っており、アカデミーに入る予定だ!
目的は単純で、勇者の役に立つ為の勉学をすると。
推薦と言っても学費が国の負担とい話であって、ちゃんと試験を受けなければならないが、そこでは魔法を学べるのだとか。
アカデミーの合格者は1人だけ従者を連れていける。アモネスの従者は既に決まっており侍女のライラだ。
元々勇者もそこに行かせる予定だったとか。
因みにライラは魔法適性がないから年齢はともかく、アカデミーの生徒としては無理なのだが、従者としてなら行けるのだ。
アカデミーに入る条件は魔力持ち。それと授業料を修める事、つまり経済力も必要なのだ。
加護持ち=魔力持ちという訳では無い。
お金の話だと、例えば宮廷魔術師団に入る事が決まっていれば、10年間の所属契約をすれば宮廷魔術師団が授業料を肩代わりしてくれるのだ。
10年間総費用を均等に返している事になる。
任務中の怪我以外でこれを反古にすると、10年から所属してた年数を分を引いた学費を返さなくてはならない。
一般人の場合、冒険者ギルドや大手の商会、貴族の契約者等、後ろ盾を得て契約している先からお金を出して貰ってアカデミーに通うのが殆だ。
貴族王族、商会の跡取りなど富裕層が子息を通わせる。
大まかにはこの2つに大分される。
そして従者は魔力持ちのサポートをすべく、生徒としてアカデミーに通う。
魔法の授業の変わりに剣術や格闘術の時間が増える。
ただ、高等教育を受けられる機会が訪れるので、魔力持ちか、またはその魔力持ちにお金を出すスポンサーの子息が従者となる。
勿論経済的に逆転しているから、従者と主人の立場は逆転している。
なので、従者とは名ばかりで、従者の方が立場が上の場合があるのだと。
お金を出してあげるのは、暗に従者をアカデミーに通わせる為にwin-winの関係になる感じだ。
晃司はそんな感じで王家をスポンサーに付けた冒険者として過ごす予定として提案する。
「いくつか頼みがある。1つは俺とラミィも生徒として入学したい。それと、勇者が発見された事はここにいる者以外には言わないで欲しいんだ。学園もそうだ。勿論その3人のお嬢様にもだ。それと俺の従者にはネリスを指定したい。異性は駄目とかなければだけど」
「ネリスは問題ありません。但し、今の条件ですとお2人合わせての入学が厳しいですわ。その、お金の問題ですの。勇者の事を秘密になさるなら、国からお金を出せません。私の自由になるお金ですと1人が限界ですわ」
「お金ってどれ位掛かるんだ?」
「全て込みで1人2付き金貨100枚、つまり合わせて金貨200枚、それも毎月必要な額なのです。1人だけでもこの国の一般人の平均年収位が必要なのです」
「金は問題ないな。毎朝神殿浴場に行けば良いんですよ。魔力チャージで毎日8万Gを稼ぐ事が出来ますから、余裕のよっちゃんですよ!」
「なるほど。7日後に一般人の入試が有ります。明日中に申し込みをすれば問題ないですわ。それと秘密にする意図は何でしょうか?」
「信頼できる仲間が欲しい。俺の事を勇者と知らないのに命を託せる奴が。その3人がそうなら良いが、その3人には入学する者の中に勇者がいるらしいと予知者により言われたとか出来ないか?」
「分かりました。そう致しましょう。ネリスについては?」
「そうだな。エリーに信頼できる冒険者を紹介して貰ったと。
アカデミーでの警護としてネリスを従者として送り込みたいが、従者は1人しか無理なので、この冒険者に引き受けて貰ったなんてどうだろうか?もし本当に1人追加したければ、ラミィの従者にすれば良いだろう?」
「よく頭が回りますわね。ライラ、ネリス、今の晃司様のお話を聞いてどう判断しますか?」
「はっ。私はお嬢様の判断にお任せします。私はお嬢様と一緒にいられればそれで良いですわ。そうですね、あの3人ならばそれで誤魔化す事が可能でしょう」
「私は勇者様のお側にいさせて頂く事が出来るのでしたら何も言う事は有りません。ラミィ様は良いので?」
「あのね、エリーさんを私の従者にって出来ないかしら?彼女は魔力無しだと聞いています」
「名案ね!話の信憑性が上がるわね!それだと陛下に私の従者として手配するとすれば、全額は無理でも、ある程度は引き出す事が出来ます。エリーは貴族では有りませんが、私が信頼している従姉妹ですから。ただ、アカデミーの貴族の生徒は一般人の生徒にきつく当たりますわ。貴族優越意識が高いのです」
「でもアモネスさんの護衛をしていれば、変なちょっかいはないのでは?」
「甘くてよ。お嬢様のハートを射止めたい者は多いのよ。貴方が邪魔だと嫉妬する者は多くてよ。勇者の事を知らない貴族は多いの」
「そいつらのはあんたがちょん切れば良いだろ?俺は勘弁願いたいがな」
「首を落とせば命が有りません。あまり過激になさらない方が宜しいかと思います。貴族は面倒なのですわ」
晃司はライラを見ながらアモネスについて溜息をついた。こりゃあ箱入りだなと。何をちょん切るのか分かっていないのだ。
注)アモネスは分かった上で、話が分からない振りをしています。
その後も話を続けたが、勇者召喚をした事は一部の者しか知らないので、手配書にはその旨を記載できなかったという。
晃司は自分の性格について改めて分かった事がある。
女性に対して極端に弱いのだ。
うるうるされたり、特に涙に弱い。
大抵の男がそうであるように、女の涙にころっと騙される口だ。
アモネスに会う前は、この世界に召喚した奴の事をいずれ殴ってやりたい!
またネリスについても、あの時尋問した奴をそれこそしこたま殴って、ヒィー!ヒィー!と言わせてやりたい!と思っていたのだ。
現実問題としてアモネスはもの凄い美人で、人となりも穏やかで優しく、とてもではないが殴れない。
ネリスに至っては向き合うと恐怖のあまり失禁までされた。
ラミィも見違える程美人になっていた。
そう、タイプこそ違えども、皆美人で、晃司は美人に弱いのだ。
ラミィはちょっと可愛いけどおぼこさんだなと思っていたが、化粧をしてドレスを着ると、アモネスにも引けを取らない美少女だったのだ。
そんなかんなで、おそらく女性からお願いをされると自分は断れないだろうと自分を理解していた。
だから勇者だと言うのを隠す。
皆には勇者だからと言い寄られ、騙されたりいいように利用されたり、場合によっては、たかられてしまうだろうと。
それを避けるのに人となりを見るのに勇者ではない立場として周りの者を観察し、信頼できる者を探す。
そういう意図だと皆に説明と同意を求めた。
要は先に言わないと流されるからだった。
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