ルキフグス
グイ・ネクスト
第1話 ボクは誰?
地球のよく似た世界にて。
竹内孝雄(たけうちたかお)は週刊少年〇〇をコンビニで手にとって、気になるページで手を止める。
「最上位魔人、ルキフグス。へえ、どんな魔人だろ?」読み進めてみたが、姿は描かれていなかった。
「ボクを呼んだ?」
「え?」と、孝雄は周囲をキョロキョロと見てしまう。
金髪を肩の当たりで切りそろえている男の子がいる。
青いローブを着ている。背丈は低く、150センチぐらいだろう。小学生だろうか。
こんな子いたかな。と、孝雄は首をかしげて、レジの方へ歩き、ガムを買ってコンビニを出た。孝雄は見ていなかったが、男の子には目が無かった。両目とも。
次の日、学校の窓際で、
孝雄は窓の外でサッカーをしている誰かを見つめていた。
どうでもいい。
授業が終わっても、ホームルームが終わっても、ずっと見つめていた。
「どうでもいい。」
孝雄はそうつぶやくと、立ち上がり、教室を出ようとした。
すでに教室は自分一人だけのはず。そう思いながらも視線を教室の扉に向ける。
あれ?誰かいる。背は低いな、下級生が遊びに…いや、小学生かな。それぐらい背が低かった。それによく見てみると、「日本人じゃない…ハーフなのかな」と、ついつい口に出てしまう。肩の当たりで切りそろえられた金の髪の毛。青いローブを着ている男の子。昨日の子だ。ただどういうわけか、目が無い。空洞なのだ。
「う、うわ、うわわわわ」と、孝雄はいつの間にか床に尻餅をついている。
ゆっくりと後ろへ下がる。
「ねえ、拒絶するの?」と、金髪の男の子の口角は上がる。
「く来るな」
「世界を拒絶して、自分さえも?ボクと一緒だねぇ」
「来るなって行ってるだろ」
「きひ?ボクは動いていないよ」
「え?」
うそだ。何を言っているんだ、こいつ。オレは後ろへ下がっているのに、お前、オレの目の前にいるじゃんよ
「きひひ。瞬間移動」
「え?」
「いただきます」口角を上げて笑っていた口は大きく開き、孝雄を飲み込んだ。
「いい感じに絶望したね、お兄ちゃん。呼んでくれてありがとう。おいしかったよ。それに戸惑いの感情も混ざっていた。一度の食事で二つの感情、得したなぁ」
剣と魔法の異世界にて。
オレンジの髪を逆立せている若き剣士トワルは魔神ルキフグスの剣を使って、武術大会を優勝した。
「なあ、トワル。その魔剣だけどさ。一体どんな契約をしたの?」と、眼鏡をかけたルバル(トワルの幼馴染)は聞く。
「契約?そんなのしてねぇ…あ、いや。オレを倒せるならオレの魂をくれてやる。って契約だったかな。というか、ルバル。大丈夫だって。魔剣はオレ様の手にあるんだからよ」
「あーまあ、そうかな。魔神ルキフグスが出て来ても怖くない…そうだよね。ランクSSSの最強の魔剣だもの。」と、肩当たりで切りそろえた青い髪をさわる。
「その通り、怖くねぇ。って、おい。ルバル…あいつ誰?お前と同じ髪型だし。いとこか?」と、トワルは聞く。
「……ひぃ」と、ルバルは足を止めた。
「おい、ルバル。何止まって……」と、トワルもルバルの見ているモノを見て動きを止めた。
金色の髪で、肩で切りそろえられている。青いローブを着ていて、やはり、目が無い。両目とも。
「お、お。オレは生きる。生きるんだぁ」と、トワルは魔神ルキフグスの剣を左から右へ一閃する。手応えはあった。
首は飛んだ。血しぶきを上げて。
切断された首は鮮血を吹き出しながら、曲線を描き、トワルの首を後ろから襲い、食べた。首無しのトワルの身体は数歩だけ前へ進み、闘技場の床に倒れるところで、金髪の男の子の口は大きく開き、動かないルバルと一緒に飲み込んだ。
「きひひ、絶望と安堵感。いい感じに味わう事ができたよぉ。きひ、きひひ」
ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ。
金髪の目の無い男の子は数を数える。
ボクの名前?何だっけ。
見えるはずの無い空洞の目が、右手に現れた白紙の本へ。
黒表紙の白紙の本はパラパラとめくれる。
風で動いているかのようだ。
ぴたっと、止まったページで、
ルキフグス。
文字が浮かび上がり、消えた。
そうそう、拒絶の悪魔とか呼ばれていたっけ。
そうそう。きひひ。
うん?数え間違い?してないよ。
今、読んでいる”あなた”を食べるから。
完。
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