第一の録『人探し』
「あぁ〜今日の会議疲れた~」
見晴がグッと背伸びをする。今日の会議はなんのトラブルも無く無事に終わった。『今日の夕ご飯は何にしよかな』と、考えながら見晴は家までの帰り道を歩いていた。
フッ、と見晴が振り向き後ろを確認する。なぜそんな事をするのかとゆうと、見晴は会社を出た辺りから誰かにつけられている感じがするのだ。『私の思い違いかな』と、見晴は思い、気にせず家へ帰ることにした。
『ただいま〜』と玄関を開け、茶の間に繋がるふすまを開けると、見晴は驚いた。茶の間に知らない男の人がいるのだ。その男は見晴を見るなり
「おぉ。見晴、帰ったか。家主の許可も無く居座っていることには謝ろう。だが、これからよろしく頼むぞ。見晴」
と、言ってきた。
ギャーっとゆう見晴の悲鳴が家中を駆け巡った。そんな反応を見るなり男は『おっと。怖がらせてしまっかな?』と言いスッと立ち上がり見晴に近寄り目の前でしゃがむ、そして見晴の耳元でこう囁いた。
「見晴。怖がらないで、俺は悪しき
と、男が言うと、男はそのまま見晴はキスをした。
見晴は男にキスされた時、『私の初めてこんな男に奪われてしもたんか!』と、少しショック、いや、かなりショックを受けた。
そしてもう一つ驚いた事がある。
それは、見晴にキスをした男がキスをした際に体が光ったのだ。
その光はだんだんと強くなり見晴は反射的に目をつぶる、そして目を開けるとその男の頬に見晴の名字である『
「え!なに、もう一回聞かせて」
見晴はあの男の話を聞いていた。
あの男が言うには、あの男は
そんな事を言われても見晴にはよく分からないのだが、とりあえず、陰陽師がこの家に来たという認識でいいだろう。
そして、何故この家に来たのかという話を見晴は聞いていたのだ。
琥珀川によると、『先日、伏見稲荷大社にお参りをした時に私が見えていたのが見晴で何かしらの運命を感じたからこの家に来た』という事らしい。
「えぇ!てことはただ単に琥珀川の事が見えていたから私の家に来たちゅうこと?」
と、見晴が尋ねると、琥珀川は『あぁ。そうゆうことだ』と言った。
「そしてだな。見晴」
琥珀川がかしこまって言う。
「なに?琥珀川。出来れば早くあなたに帰って欲しいんだけど」
と、見晴が返すと琥珀川は
「これから見晴は人ならざる者が起こした怪異を解決するという責務を俺の代わりにやってほしい。と言うよりやれ。いいな。見晴」
と言ってきた。見晴は少しきょとんとしてえっという顔して
「えぇ!なにそれなにそれ、はぁ、無理だよ無理無理、無理です。ってゆうか相手って人ならざる者なんだよね。人じゃなんいでしょう。私無理だよ。そもそも私生身の人間だよ。人ならざる者相手に生身の人間なんてどう考えても無理だよ。お引取りください」
と、言う。
だが、琥珀川は諦めずに何度も何度も言ってきた。そして、見晴にとっては心が折れる事を言ってきたのだ。
「そもそもな、見晴!見晴は俺と憑神契約をしたのだ。だから見晴は俺の責務を俺に代わってやることが俺と憑神契約をした代償だ。だからやれ!」
「ちょっとまって!憑神契約ってなに。いつしたの?」
「俺とキスしただろ!それが憑神契約だ!」
と、言われ、見晴は頭が真っ白になった。
「えっ・・・・・・そぉそれはオマエが勝手にやったことでしょ!少なくとも私の意思でしたんじゃないのよ!」
と言った。
言い争いは続き、結局折れたのは見晴だった。幸いにも明日は土曜日、仕事は休みである。
その日の見晴の夢で優馬と名乗る見覚えの無い人が見晴の夢の中に入ってきた。その優馬と名乗る男はこういったのだ『サキを・・・・・・サキを探してください。』っと。
見晴が起きて、朝御飯やらを食べ終わったタイミングで、インターホンがなった。ドアの向こうにいたのは昨日夢に出てきた優馬であった。とりあえず優馬を家の中に入れ話を聞く。
「えぇっと、なに?サキっていう人を探せばいいの?でもさ、それって警察とかの仕事じゃん。なんで私に?」
と言うと優馬からは
「いや〜。それが見晴さんに頼めばサキの事見つけてもらえるって直感で思って、宮城から飛んで京都まで来ちゃいました」
と、言われた。
「へぇ、優馬って宮城県出身なんだ」
と言うと、
「あぁ〜はい。生まれは京都で三、四歳の時に親の転勤で宮城に、って感じです」
と言った。
「ふーん。でさ、本題何だけど、サキってどんな人?そもそもなんで探すことになったの?家出?」
と見晴が言うと、優馬は少し考えて、
「うーん。サキは家出とかじゃなくて、突然いなくなったというか何というか・・・・・・」
と言うと見晴が少し顔をしかめて、
「えっ、いなくなった、突然?」
と、言った。
「ハイ、そうなんです」
「ふーん。あっ!あのさ。サキって漢字でどう書くの?ちょっとこれに書いてみて」
と言い、そこらへんにあった紙とペンを優馬に渡す。
そして優馬がサキという名前を書いていく。そして、優馬が書いたのが『桜狐』という漢字だった。
「ん、これは」
いままで黙っていた琥珀川が口を開く。
「なに?琥珀川?知り合い?」
見晴が問う。それに対して琥珀川は
「いや・・・・・・どこかで聞いたことのある名ではあるが・・・・・・どこだったかの~」
という曖昧な返事が帰ってきた。
ここで見晴はふと疑問に思った。『さっき普通に琥珀川と話したけど――優馬って琥珀川のこと見えてる?』と。
見えてなかったら大惨事だ。見晴はただの空間に話しかけてるやばい奴と思われてしまう。
「ねぇ。優馬」
「はい。なんです。見晴さん」
見晴が恐る恐る尋ねる。
「私の横にいる平安貴族みたいな服装の人、見えてる?」
そう言うと優馬がさらりと
「見えてますよ。ていうかその人、琥珀川っていうんですね~」
と言われ見晴は安堵した。
ふぅーと見晴が息を吐き優馬に向かって
「わかった。じゃあその桜狐っていう人探して見るから」
そう言うと優馬が満天の笑顔で『ありがとうございます。見晴さん!』と言った。――その際も琥珀川は何やら考え込んでいた。
一週間が経った。まだ桜狐は見つかっていない。
「うーん。桜狐が全然見つからない。一体どこにいるのよ~」
見晴が愚痴をこぼす。すると、琥珀川が見晴を呼ぶ
「なに〜琥珀川。桜狐っていう人のこと思い出した?」
「いや、そうではない。ただ俺の式の紹介をし忘れていただけだ」
と言った。
「なんだよ~桜狐のこと思い出したんじゃないのかよ~」
と見晴が言うと琥珀川が『式、召喚』と言い柏手を打った。すると、琥珀川の横に狐のお面を被った四人の女性が現れた。
「見晴。この者達が俺の式だ。俺とこの者達は契約を結んでおり、俺は見晴と契約を結んでいる。すなわち、見晴もこの者達を使役できるというこだ。お前ら面を外せ、この御方が今からお前達の主である東見晴様だ」
と言う。面を外した四ですか人は見晴も惚れ惚れしてしまう程の美人であっった。
「この者達の名は俺の横から順に、
と琥珀川が言うと添達は『よろしくおねがいします。見晴様』と言って礼をした。
そこからニ週間が過ぎた、未だ桜狐は見つかっていない。完全に行き詰まった、いや行き詰まるのは目に見えていたのかもしれない。なにしろ情報が少なすぎた、優馬の口から出た情報は桜狐という名前だけ。見晴はこの3週間頑張って桜狐を探した。友達、上司、後輩、警察官、色々な人に桜狐を知らないかと聞いた。答えはみんな一緒『知らない』だった。ここまで来ると流石に優馬に怒りが湧いてくる。桜狐は本当にこの世界にいるのか、もしかしたら宮城にいた優馬が頭を打ってその際に出来たただの妄想上の人物で優馬の頭がそれを本当にいると勘違いしただけなんじゃないのか。そんな事を見晴は考えた。
「ねぇ、優馬」
「はい、なんです」
優馬が返事をする。
「桜狐って本当にいるん!もしかしてあなた私のことおちょくってるんじゃあらへんの!そしたらもうごめんや!私いつまで桜狐のこと探さなあかんとおもてんねん!なぁ優馬聞いとるんか!私だって会社行ったりして忙しいんや!本当は桜狐なんて探してる時間なんてないんやで!」
「えぇ、ちょっと見晴さん落ち着いて。桜狐は本当にいます。見晴さんのことをおちょくってるわけじゃありません」
見晴が急にまくしたて、優馬が返答に困る。
「見晴、優馬」
いつからいたのか琥珀川が見晴達を呼ぶ
「なんや琥珀川!」
「今から伏見稲荷大社に行くぞ。だから出かける支度をせい。あと見晴、落ち着け」
「なんで行かなあかんねん」
見晴が言う。そして琥珀川から出た言葉は見晴達から見れば希望の光だった。
「そこに桜狐がいる。だから迎えに行くまでだ」
「えっ桜狐見つかったんですか!」
優馬が目を輝かせながら言った。
「よし。ここで良いだろう」
そう言って琥珀川は伏見稲荷大社の三ツ峰辺りのところまで来た。もうあたりは真っ暗である。
そうすると琥珀川は見晴達の背中をトンと叩きこう呼びかけた
「桜狐。出て来い。優馬だぞ」
スゥーと乾いた風が見晴達を通り抜ける。桜狐は出て来ない。呆れた琥珀川が
「そうか、出てこないか。じゃあこちらから強制的に」
と言い、胸の前で手を合わせる、そして『桜狐、召雷』と言い柏手を打った。
バリン!という音とともに雷が落ちた。雷が落ちた所は砂ぼこりが立っていてよく見えないが、うっすらと人影がある。
まさかあれが桜狐なのかと見晴は思う。そして砂ぼこりがおさまりはっきりとその人が見えた時、優馬が叫んだ
「桜狐!!!」
と、桜狐はビクリと体を震わせ優馬の方を見る。桜狐の顔には涙が浮かんでいた。そして泣きじゃくる一歩手前のような声で
「ゆーま様」
と言った。
桜狐の泣きじゃくる声が聞こえる。泣きじゃくる桜狐を見て優馬は少し困っているようだった。
「琥珀川さん」
優馬が言う
「桜狐はなんでいなくなったんでしょうか?」
「んー。それについては本来見晴が説明するのだが、この件に関しては見晴では説明できんから特別に俺が教えてやろう」
と、琥珀川が言った。そして琥珀川からの説明は
「まず、優馬。桜狐が見えなくなったのは宮城県に引っ越す一ヶ月前ではないのか」
そう言うと優馬は『はい。そうです』と言った。その返答を聞き琥珀川は更に続ける。
「うむ。それでだ。事実を言うと桜狐はお前が宮城県に行くまでずっと隣りにいたぞ」
と言うと優馬が驚いた顔をして
「えぇ、じゃあ桜狐がいなくなったんじゃなくて、見えなくなったってことですか?」
と優馬が言うと琥珀川が『あぁそうだ』と言った。
ここでふと見晴に疑問が浮かんだ。なぜ宮城県に引っ越す1か月前なのか、別に見えなくなるのなら引っ越す日に見えなくなっても良いのではないかと。そんな事を思っていることを察知したのか琥珀川が見晴の方を振り向き『そうだよな。そう思うよな』と言って説明を続ける。
「それでだ。なぜ桜狐が見えなくなったのか、それはお前、優馬の意識が関係している」
と言った。そう言うと優馬が
「えぇ。でも俺は桜狐が見えなくなってほしいなんて一度も思ってませんよ」
と言った。
「あぁそうだ。優馬は桜狐が見えなくなってほしいとなんて思っていない。だが、お前の思いに対してお前の意識が逆の行動ををした。どうせ離れ離れになるのなら、どうせ会えなくなるのなら、今の段階から見えないほうが良い。そう意識が思い、桜狐との磁気をずらした」
と言うと琥珀川が見えなくなる、必死に探してもいない。すると突然見晴の真後ろから『ここだここ』と声が聞こえる。振り向くとそこにいたのは琥珀川だった。
「な。いまやって見せたように磁気をずらすと絶対に見えない。俺と見晴のように憑神契約をしていてもだ。逆に、磁気をずらしてない桜狐はずっと見える」
と言うと琥珀川が優馬に問いかける。
「優馬、お前はずっと桜狐を見ていたいか」
と言うと優馬は『ハイ。もちろんです』と言った。
「そうか。お前ら人間が我ら神を見るための条件が三つある。一つ目が神が何かに化けること、2つ目が磁気を合わせること、そして三つ目が憑神契約をすることだ」
そう琥珀川が言うと桜狐が強引に優馬とキスをする。すると桜狐の体が光りだす。そして光が収まり桜狐の頬には優馬の名字である
すると突然、ブオーっと不気味な風が吹いてきた。その風はどんどん大きく強くなっていった。
その時琥珀川が後ろを振り向く。琥珀川にはきちんと聞こえていた風の音に混じって『返せ、ワタシの・・・・・・ワタシの子どもを返せ!』という声が、風が恐怖を感じる程強くなった時、琥珀川が持っていた笏で宙を切り叫ぶ
「目に見えぬ者よ姿を現せ!」
と。すると突然木々の間からドンという音と共に煙が立ち上った。そこには山の木々よりも大きな白狐が見晴達を見下ろす様に居座っていた。
「汚らわしい人間め・・・・・・桜狐を返せ!」
そう白狐が言うと見晴と優馬の体に自分達よりも倍の重さの人が乗りかかったような圧を受ける。すると桜狐が見晴と優馬の前に立ち
「お母さん!やめて!優馬様と見晴様が死んじゃう!」
と叫んだ。白狐のすきを見て琥珀川が『白菊大神。召雷』と言い柏手を打った。するとギャーと言う声と共に見晴達の圧が消える。目の前には桜狐の母親と見られる白狐がそれよりも大きい白狐に噛みつかれていた。
「ギャー。白菊様ぁ。お許しを〜」
「何を言う。桜狐を優馬の憑神にすると言わぬまで放さぬぞ」
とその白菊という人が言うと桜狐の母親は
「分かりましたぁ!桜狐を優馬の憑神にしますぅ~。だから、お許しを〜」
と言うと白菊が桜狐の母親を放し桜狐の母親はひぇ~っと言いながら逃げていった。
『ありがとう。白菊』と琥珀川が言うと白菊は人間の姿になった。白銀の髪にショートカット、小柄な体に凛とした顔立ち、おまけにもふもふな狐耳までついている。まったく琥珀川の式達といい白菊といい琥珀川の周りには美人しかいないのかと思う。ちなみに桜狐も相当なべっぴんさんだ。見晴の心臓に悪い。少女漫画的シチェーションをされたら見晴でもコロッと堕ちてしまうかもしれない。とか思っていると白菊が優馬のほうに近づいて行った。
「ん〜桜狐。良かったな~。これでお前さんは優馬の憑神だ。きちんと優馬のことを守ってやるんだそ」
と言った。
「桜狐。見ないうちに成長したな。前は幼稚園児位の背丈だったのに、中学生位の背丈になって」
伏見稲荷大社の帰り道、優馬はそんなことを言った。そうすると桜狐が
「そりゃあね~。十何年間会えなかったんだからそうでしょうよ」
と言う。『なんだろう生き別れた父親と娘みたいな事を言うな〜』と見晴は思っていた。
「見晴さん」
優馬がかしこまって言う。
「なに。優馬」
「えっと・・・・・・そのー、見晴さんの責務みたいなやつ。手伝いたんですけど。いいですか?」
と言ってきた。
「エッ!手伝ってくれるのありがとう」
と見晴が行ったその時ふわっと風が吹き桜吹雪が見晴達を包み込んだ。そうそれは――見晴達を祝福しているかのように。
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