第18話・押忍!


 そのままCブロック・第2試合が始まったものの、対戦カードがあまりにも悪かったらしく。たったの数分で終わってしまった。


 そんなエメリオの対戦相手は茶髪ボブカットで、頭に「喧嘩上等」と書かれた鉢巻を巻いて、胸にサラシを巻き、黒の特攻服を羽織っている。エメリオと歳の近い女性アバターのⅤtuberで、実況席にいた参歩も「まあ、あの子が相手なら納得だね」と試合結果に納得していた。


 なぜなら、Cブロック第3試合でエメリオと対戦する相手は、インデックスの喧嘩番長乙女! 2年連続でライブラ・インデックス杯のチャンピオンの座に座っている。押忍(おしのぶ) 乱(らん)なのである。


マリア「流石は乱ちゃん! 14期生としてインデックスに採用されて以降、ライブラをはじめとする様々な格ゲーの視聴者参加型配信で大勢のチャレンジャーを返り討ちにしてきた実力者なだけはある!」


 チャット欄も乱のことを知っているリスナーたちが「おい、次の相手喧嘩番長乙女だぞ!」「インデックスの中でトップクラスの格ゲー技術を持ってる人じゃん!」「\(^o^)/オワタ」「去年のインデックス杯で参歩さんに勝った人じゃねえか!」などと、エメリオにとって絶望しか感じないようなコメントが流れた。


 そんな乱が選ぶキャラは何と、参歩が使っているあの『フェンリー』なのである! まさかのキャラ選択に実況席にいたマリアが「やはり出してきたかフェンリー! エメリオちゃん苦戦を強いられるのでは?」と言うと、リーシャが「アナタとのコラボでエメリオをけちょんけちょんにしたヤツね。今回はくすぐり攻撃とかとできないけどあの子大丈夫かしら?」と心配すると、参歩が「いや流石にそれはあかんやろ」とツッコミを入れる。


 これにはチャット欄も「お母さま流石に今回それやったらあかんでしょ」「乱姐さんはフェンリーとか拳で語り合うタイプのキャラの扱い上手いよね」「性格が出るぜ」など様々な反応をするリスナーが湧く。


 ちなみにエメリオが選択したのは第1試合同様に『ハイン』で、参歩の時よりどれほど上手く立ち回れるのかが求められるだろう。


 開幕早々に動いたのはエメリオ、爆弾野球ボールをノックして先制攻撃を仕掛けるも、乱の操作するフェンリーはジャンプしてそれを回避し、そのまま飛び蹴りに派生した。


 しかし、特訓を積んだエメリオはそれを読んでおり、操作するハインはバットを振りかぶってカウンターのフルスイングを叩き込んだ。


 カキーン! と強烈な一撃が入り、乱の操作するフェンリーを吹き飛ばし、空中で体勢が崩れたままの所に追い打ちをかけにいった。


 ダッシュで間合いを詰めてジャンプからスマッシュ攻撃を叩き込む。乱の操作するフェンリーは地面に叩きつけられた。


チャット欄「あの乱姐さんが押されてる!」「これワンチャンいけるのでは?」


 しかし、フェンリーがダウンから起き上がった瞬間、エメリオの有利な状況が一変した。


復帰した乱の操作するフェンリーはダッシュでエメリオの操作するハインに間合いを詰めたため、エメリオはカウンターを狙ってバットを振りかぶった。


 だが、振りぬいたバットを参歩の時のようにジャスト回避で避けられてしまい、カウンターの回し蹴りが入る。


 参歩との戦いで接近戦は不利と思ったのか? エメリオは一度距離を取ろうとするも、乱の操作するフェンリーの鉄山靠が決まり、体幹を崩されて怯んだところに翔狼拳による打ち上げから牙狼斬鉄掌で叩きつけという参歩の時と同じワンコンを決められて蓄積ダメージが一気に増えた。


 現在エメリオの操作するハインの蓄積ダメージは70とそろそろ強攻撃を受けたら吹き飛ばされるところまで来たため、エメリオは距離を取ろうとするが、乱の操作するフェンリーはガンガン間合いを詰めてくる。


マリア「さあ、乱ちゃんここで怒涛のラッシュで巻き返してきた。完全にペースをつかんでいる!」


参歩「積極的に間合いを詰めて遠距離攻撃を潰しているな。『相手が引いたら押す!』それがあの子の戦闘スタイルだ」


リーシャ「エメリオ! 距離を取るんじゃなくてカウンターを取って!」


 完全に乱のペースに飲まれているエメリオはそのまま反撃も出来ずに強烈な一撃を受けて場外まで吹き飛ばされてゲームセットとなり、エメリオは第3試合で脱落となった。


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