第8話・銀狼
そして、参歩の告知通り……エメリオと【ライオットブラザーズ】の対戦配信をする日が来た。
キャラクターの選択画面が表示されている状態で右下にエメリオ、左下に参歩のアバターが表示されており、参歩が始まりの挨拶を始める。
「はいどうも皆さんこんばんは! インデックスの名探偵! 土手川 参歩だ! 今日はリーシャとデートしていた時に話した通り、エメリオと【ライオットブラザーズ】通称【ライブラ】の対戦配信をしていくぞ! 残機0の一発勝負を19時までやる」
参歩の挨拶が終わってエメリオは「お父さんに勝つために、ひとつのキャラ極めるのに200時間使った!」と豪語すると、参歩の配信画面のチャット欄に「気休めにもならん」「ぜってぇ無理だ」とエメリオに対して辛辣なコメントが続いて、スーパーチャットでは「ボコられて泣く方に100ペソ賭ける」「なら俺は200ペソで!」など、ペソを円に換算した額が投げられる。
その一方でエメリオの画面のチャット欄では「エメリオちゃんファイト!」「古参なんかに負けるな!」「引導を渡してやれ!」などエメリオを応援するコメントが寄せられ、キャラを決定した。
エメリオが選択したのは『ハイン』という白の野球帽をかぶった野球のユニフォームに身を包んだ金髪ショートヘアの野球少女で、金属バットを武器に豪快なフルスイングによる吹き飛ばしと、爆発する野球をノックするという近距離と遠距離の戦いに向いているキャラでそのチョイスにチャット欄で「へえ『ハイン』使うんだ!」「相手にとっては距離の取り方が難しいキャラだな」とコメントが流れる。
そして、参歩が選択したのが『フェンリー』という銀髪オールバックの背中に銀の糸で狼の頭の刺繡が入った深緑色のパオ(男性用チャイナ服)を纏った男のキャラで、見た目通りの徒手空拳による肉弾戦を得意とする。
エメリオは『フェンリー』を選んだ参歩に「お父さん『フェンリー』使うの!? あたしの中だとあまり強そうなイメージないけど……」と言うと、参歩は「娘だからと言って手加減する気はないからな」と言った。
その時、参歩のチャット欄では「さあて『銀狼』相手に1ラウンド何分持つのかね?」「参歩さん、新人に対しても容赦しない人だからな」「この人が使う『フェンリー』のバグ性能見てると頭おかしくなる」などが目立つ中、エメリオのチャット欄では「『ハイン』だったら近接一辺倒の『フェンリー』を完封できるんじゃない?」「なんだかんだ言って相性の悪いキャラを選ぶ参歩さんは優しいお父さん」「ちょっと待って『フェンリー』って確か……」などのコメントが流れる中、第1ラウンドが始まった。
ステージは摩天楼の屋上で「レディ……ゴー!」という女性のアナウンスによる開始の合図とともに、エメリオから仕掛けた。
開幕から爆発する野球ボールをカキーンとノックし、ジャンプした。【ライブラ】は横スクロールの格ゲーのため、正面から来る遠距離攻撃はジャンプして避けるのがセオリーとなる。
つまり、エメリオは参歩がジャンプでこちらの先制攻撃を回避することを前提にし、ジャンプしたところを撃墜するつもりなのだ。
しかし、そんなエメリオの思惑は外れ、参歩の操作する『フェンリー』は、クルリと駒のように回転し、飛んできて野球ボールがすり抜けるように通り過ぎる。
思いもよらぬ行動にエメリオは「それ避けれるの!」と驚きの声を上げると、参歩は「翔狼拳!」と言って、空中にいるエメリオの操作する『ハイン』にスカイアッパーを打ち込み、続いて「牙狼斬烈掌!」と、右手で叩きつけるモーションで斬撃のエフェクトが入る叩きつけ攻撃を喰らう。
地面に叩付けられた『ハイン』は素早く体勢を立て直し、肉薄する『フェンリー』に向かって金属バットを連続で振るうも、野球ボールを避けた時と同じ動きで振り回される金属バットを避ける。
「ちょっと待って! お父さんジャスト回避上手過ぎない!?」
エメリオは驚きの声を上げていると、参歩は容赦なく「弱……弱……強!」と言って、右パンチ左パンチからの右の突き蹴りで『ハイン』を吹き飛ばし、場外に飛ばされそうになったため、エメリオは何とか前に出てリングアウトを避けた。
このゲームにはキャラにHPはなく。勝つためには場外へ吹き飛ばしてリングアウトを取るしかない。更に蓄積ダメージが高ければ高いほど吹き飛びやすくなるため、現状……エメリオの操作する『ハイン』の蓄積ダメージはかなり溜まっている。
エメリオのチャット欄では「待って! この人強すぎないか?」「ジャスト回避上手過ぎるだろ!」「あれタイミングがシビア過ぎて難しいんだけど!」と驚きのコメントで埋まる中、参歩のチャット欄では「ホントに参歩さん『フェンリー』の扱い上手いよな」「日本ランカーで『フェンリー』使ってるのこの人ぐらいだよね」「流石【インデックス】で『銀狼』と呼ばれる男」と賞賛コメントが流れていた。
「夕飯までにあと3ラウンドはやりたいから速攻で片を付けさせてもらうぞ」
参歩はそう言って、エメリオの操作する『ハイン』に肉薄して連続攻撃を叩き込み、エメリオは「うわぁガード!」と言ってガードコマンドで攻撃をしのぎ、隙を狙って反撃するも、ジャスト回避で避けられてしまい、鋭いカウンターが入る。
蓄積ダメージがもう100を超えた瞬間、参歩が「先ずは一本!」と言って、強烈な右の突き蹴りを決めると『ハイン』は場外へ吹き飛ばれ、戻ってこれなくなった。
「あーっ! ぶっ飛ばされたー!」
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