ここに誓う

第1話

「逃げずに生きられるわけがないんだから大丈夫」

　地元に逃げ帰ってきたぼくに姉さんはそう言葉をかけてくれた。

「よく生きて帰ってきたね」

　そう言って家に迎え入れてくれる。

「ごめん」

「謝ることはないよ。傷つけられたわけじゃないし」

「でも、やっぱり噂になるでしょ。僕が帰ってきたことがさ」

「そりゃなるかもね。狭い田舎だし」

「そうなったら居づらくなるだろう？」

「そんなことないよ。弟が帰ってきた。それだけのことで居づらくなるわけないじゃない」

　姉はそう言ってのける。

「最愛の弟が無事に帰ってきた。それ以上に嬉しいことなんてないんだよ」

「でも夢に向かって挑戦して、叶えることが出来ずに戻ってくる。これ以上に格好悪くて、聞こえが悪いことはないように思うよ」

「挑戦をした。夢に向かって挑戦せずに諦める人が多い中で挑戦をした。結果はどうあれその行動力は誇るべきだと思うよ」

　決して否定はしない。ぼくがぼくを否定しても、姉さんはぼくを肯定する。その優しさになんだか涙が出そうだ。

「そんな行動力ある弟が挑戦したことでたくさんの経験をした。行動力と経験でここでどんなことをするのか。私はそれが楽しみなんだよね」

　そう言って姉さんは微笑む。もう堪えるのは難しそうだ。

「人生まだまだ。挽回するのに遅いなんてないんだよ。だからまたここから頑張ろう」

「分かったよ」

　きっと涙声だったろう。それでもどうにか返事が出来た。

「もう一度ここから頑張ってみるよ」

　それは誓いだった。自分への、そして姉さんへの誓い。もう一度やり直すという固い誓い。もう決して折れない。そう誓うのだった。