第16話 騎士団の依頼

 私とフェルルは騎士団支部にやって来た。

 支部は四角くて、ビルのような建物だった。


「ここが騎士団支部?」

「そうだよ。はぁー、また門番もんばんいるよ。面倒めんどうだねー」


 フェルルは心の底から大きなため息を吐いた。

 確かに今のフェルルからしたら、ここはかたくるしいに違いない。


「でも行かないとね」

「わかってるよ。それに今日は、師匠と一緒だからね」


 そう言ってくれると私も嬉しい。

 フェルルはめちゃめちゃ私のことを好きでいてくれて、それけら信じてくれるから、私もフェルルのことが大気好きだった。


「すみません」

「ん?なんだ、お前達は」

「依頼を受けたクロエです。それから」

「フェルルだよー」


 そう言うフェルルの顔を見ると、騎士の人達はスッと顔を引き締めた。


「フェルル様!」

「フェルル様でしたか。どうぞ、奥で隊長がお待ちです」

「そっか。ラディアが待ってるんだね、OK」


 ラディア?その人がこの騎士団支部の隊長さんなのかな。

 それにしてもさっきから思ってたけどー・・・


「私のこと、無視ですか?」


 完全に私のこと、眼中がんちゅうにないよね。何だかさみしいけど、ここはフェルルがアットホームだもんね。仕方ないよ。


「それではフェルル様、どうぞ中へ」

「お付きの方も、くれぐれも粗相そそうのないように」

「あっ、そうですか。はい……」


 完全に私だけアウェイなのが気になったけど、細かいこと気にしても仕方ないよね。

 私は少しだけ目をらしてしまうのでした。



 騎士団支部の中に入ると、レンガ造りだった。外の構造こうぞうと同じだ。


「何だか静かなところだね」

「そうだよ。まあ、ここが冒険者の町だから、騎士の力があんまりおよんでないだけだけどね」


 フェルルは社会事情しゃかいじじょうをそう説明してくれた。わかりやすい。


「そう言えば、この町の騎士隊長さんとは、仲がいいんだよね?」

「仲が良いって言うより、昔からの知り合いなだけだよ」

「知り合いか」


 フェルルは軽く言った。

 そして、私達は廊下ろうかの一番突き当たり部屋に辿たどり着いた。


「ここが隊長室?」

「そうだよ。はぁー、じゃあ開けるね」

「うん」


 フェルルは大きなため息をと共に、ドアを開けた。

 そこで待っていたのは、ゴツゴツした鎧を着た、女性だった。


「やぁ待っていたよ、よく来てくれたねフェルル」

「ラディアこそ、私達を呼んだってことは、何かあるんでしょ」

「まぁその話はゆっくりしようか。あぁ、クロエ君だったね。きみも座りなよ」


 しっとりした長い黒髪。

 はっきりとした顔立ちと、りんとした目元が特徴的な、しっかり者感がとても強かった。


「さて、君達2人をまねいたのは他でもない。今回は、2人にどうしても頼みたいクエストがあるからなんだよ」

「それは聞いてます。それで、どんなクエストですか?」

「実はね、ここから25キロほど行ったところにある、それは深い森があるんだが、そこに自生じせいしているとされている、まぼろし白百合しらゆりを採ってきてほしいんだよ」

「白百合?」


 私は首を傾げる。

 何でそんなクエストを私達に頼むのか、それからどうしてその花が必要ひつようなのか。


「ラディア、もったいぶらずに、早く話してよ」

「せっかちになったね。でもそこが可愛いところだ」

「うえっ」


 なるほど、フェルルが嫌っていたのがわかった。

 この人、かなりきっちりしている。この雰囲気ふんいきが今のフェルルにはつらくてしょうがないみたいだ。


「でも、そうだね。確かに今回のクエストは異例だ。でも、君達だから頼めると言ってもいい」

「どう言うことですか?」

「今回の森は、私達の調査外にある。だからむやみに手を出せない。そこでだ。フェルルが信用している君達になら、任せられる。だからこそ、2人に任せたいと考えたんだ」


 その話を聞いて思った。

 多分、ラディアさん達はかなり、あせっているんだ。だから私達に頼んでいる。

 それを無視は出来ない。


「わかりました、お引き受けします」

「本当かい」

「はい。でも、危険と判断したら、すぐに引き返しますからね」

「それは承知しょうちしている。では、こちらが前金まえきんだ。装備を整えるなんなりに使ってくれ」


 ラディアさんは私達に大金を払ってくれた。

 これは今更断れないな、と思いつつ、私とフェルルはその森に行ってみることにするのでした。

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