第6話 冒険者の町『ファスト』

 あれならどれだけ走っただろう。

 途中森を抜けて草原が見えて来て、そこから伸びる一本道をひたすら走って来たけど、あんまり疲れなかった。多分だけどこれも強化された身体からだだからだと思う。


「着いたよ師匠」

「それはいいけど、結構走ったよね?」

「そうかな?まだ30分ぐらいしか経ってないよ」


 30分フルで走ったのに全然疲れないなんて、とんだ体力の持ち主だ。

 私は自分もそうだけど、素直にフェルルがすごいと思った。それに加えて全く汗をかいていないし、それどころか爽やかすぎてまぶしい。


「それじゃあこの人達は私が騎士団支部に連れてくから、師匠は適当に町の中ぶらついててよ」

「えっ、でも私お金……」

「ほいっ!」


 フェルルは私に何か投げつけた。受け取ってみると袋だった。かなり重たい。ひもを解いて中身を確認してみると、そこにはたくさんのお金が入っていた。


「好きに使っていいよ」

「でもこれってフェルルのでしょ!」

「いいのいいの。私、その100倍の貯金あるから」


 えーっとこの袋の中に一体いくら入っているのかはわかんないけど、多分相当だ。つまりフェルルはかなりのお金持ちなんだと痛感させられた。


「マジで言ってんだ」

「じゃあ師匠、後で宿屋篠月しのつきで合流ねー。私も夕方には帰るからー」

「あっ、フェルル!行っちゃった……」


 私は1人取り残されてしまい、困惑した。

 とりあえず町に入ろう。そう決心して町の中に一歩踏み入れた。



 町の中は結構あれだ。ヨーロッパの町並みに近い気がする。よく王道もののRPGでお世話になるような町並みがひたすらに続いているけど、擬似的ぎじてきに中世ヨーロッパの町並みを体験しているみたいで結構楽しい。


「前世でもこう言うVR出せばいいのに」


 なんて思ってももう遅い。

 私はふと切り替えて、ぶらぶら散歩がてらに町並みを見て回ることはした。


「それにしても色んな人がいるんだ」


 町の中を歩いてみて最初に察したのは色んな人種がいることだった。

 人族や獣人、亜人なんて呼ばれてるのかな?そんな人達も多い。さらには耳が長いエルフって呼ばれる人達や、かなり背丈の小さいドワーフなんて人達、逆にめちゃデカい巨人族なんてのもいる。本当に見ていて飽きない。


「お嬢さんどうだい?1本いかが」

「じゃあいただきます」


 私は路上ろじょうで串焼き屋さんをしていたオジサンから、串焼きを一つ買った。

 ハムハム。うん、美味しい。こうばしいら焼き加減で、匂いも味も絶品だった。舌触りも良くて肉汁が閉じ込められていたのが一気に溢れ出す。もう一度言おう、美味い。


「あっ、そうだ。オジサン、篠月って宿屋さん知ってますか?」

「篠月?あぁ、あの昼飯が美味いとこだな。それなら、大通りを外れて裏道を行った突き当たりだな」

「わかりました」


 私はオジサンに宿屋の場所を教えてもらった。

 まだ太陽は真上を少し傾いたぐらいだけど、一回行ってみようかな。私は串焼きを頬張りながら、宿屋を目指して歩き出しました。

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