転生したら女の子勇者に懐かれたのはいいけど、私のことを師匠とは呼ばないで!

水定ゆう

1章目:異世界転生

第1話 女神の部屋

 気がつくと私は真っ暗な部屋の中いた。

 寝そべっていた私は起き上がり、周りをキョロキョロ見回した。


「真っ暗で何もみえない」


 誰も説明してくれなかった。

 確か私は学校に行く途中だったはず。今年から高校生になる予定だったからウキウキ気分で朝は早く家を出たんだ。

 あれ?でもそこからの記憶がないな。最後に覚えてるのは確か・・・あれれ?


「思い出せませんよね。仕方ないですよ」

「誰!?」


 不意ふいに声が聞こえて来たので私は声のした方に振り返る。そこにいたのは真っ暗な部屋の中ではかなり目立つ真っ白なドレス姿の女の子だった。布面積がそこそこあって危ない。私ならぜーったい着れない。


「あのー」

「私はソフィアです。女神ソフィア。白澤黒江しろさわくろえさん、貴女あなたは雷に打たれて死んでしまいました。ご冥福めいふくをお祈りいたします」


 えっ、死んだ。私が?

 だけど思い当たるふしはある。あの時空がピカッと光って、その直後私の記憶がなくなってる。

 つまり私はあの時雷が落ちて、死んだことになる。


「マジですか?」

「はい。マジです」


 女神とか自分で言っちゃってる系女の子に言われても信憑性しんぴょうせいはかなり薄いけど、信じてみるしかない。だが、それ以外になんにもない。


「わかりました。それで私はこれからどうなるんです?」

「意外ですね。ここに来る方のほとんどは自分の死を受け入れられないのに」

「でもそれが真実なんでしょ。私は自分が死んだ記憶がないから受け入れが早いのかもですね」


 私は笑っていた。

 笑わないとやってられない。そんな感情がお腹の中でグルグルしていた。


「ごめんなさい。でもそう言ってもらえて安心しました」

「どゆことです?」

「実はですね黒江さん。貴女あなたには異世界転生のチャンスが与えられたんですよ!」


 ソフィアさんはとびきり笑顔で私にそう答える。

 いやいやいや、なに言ってんですかこの人は。いや女神さんは。異世界に転生ってそんな小説みたいなこと本当にあるわけないじゃないですか。もしかして私をからかってるのかな。


「からかってなんていませんよ」

「なんでわかるんですか!?」


 私は声なんて出してない。

 なのに心の中で思っていたことが全部筒抜つつぬけだった。この人は間違いない。普通の人じゃないんだ。


「はい一応女神ですから」

「そ、そうですか」

「そうですよ」


 ソフィアさんは軽くうなずく。

 可愛らし容姿ようしと相まって私の心が揺れ動く。女の子なのにね。私もソフィアさんも。


「それで本題に入っても構いませんか?」

「はい、私が異世界に転生する話ですよね?」

「そうです。とは言っても赤ちゃんからやり直すんじゃなくてそのままの姿で転生してもらいます。もちろん言語は伝わりますし、身体からだもかなり丈夫になっているのでそう簡単に死んだりしませんよ」

「なによりです」


 そうだよね。せっかく転生したのにすぐに死んだんじゃ元も子もない。

 でもそれだけで果たして生きていけるのかな?不安だ。


「不安なんてありませんよ!私がいつでもサポートしますから」

「ソフィアさんが?」

「はい。それにこれから黒江さんが行く世界には他にも転生者がいるんです。だから大丈夫ですよ」


 そう言われてホッとした。

 もしも1人だったら心細いにも程がある。


「分かりました。じゃあ頑張ってみます」

「ああちょっとまってください。その前にこちらを飲んでもらわないと」


 そう言われて手渡されたびんの中には液体が入っていた。だけど普通の無味無臭むみむしゅうの透明な水だった。


「これって水ですか?でもなんでそんなの飲むんです」

「これはただの水じゃないんですよ。これを転生者が飲むことで1つだけ特殊な能力が使えるようになるんです」

「特殊な能力?もしかして超能力とか異能力みたいなやつですか」

「そうですね。その認識で間違ってません。でも、少しだけ違うのはどんな能力が出るかは完全にランダム。その人の内側にあるものを押し出したやつになります」

「ガチャ的な感じですか?」

「それでも問題ありませんよ」


 なるほど、かなりわかりやすい。

 それなら私でも出来そうだ。


「じゃあ飲ませてもらいますね」

「はい、ぜひぜひ!」


 私はソフィアさんから受け取った瓶に口をつけ、中に入っていた水を飲み干す。うん。普通の水だ。

 別に力が出てくるとかそんな感じはないけど、まあ美味しい。


「本当にこれで大丈夫ですか?」

「はい問題ありませんよ。もしもなにかあったら身体が爆発しちゃいますから」

「えっ!?」

「嘘ですよ」


 いやいや嘘っぽくない言い方が怖いよ。

 多分だけど私の緊張をきほぐそうとしているんだと思う。ありがたい。


「それじゃあ行きましょうか」

「はい、準備できてます」


 私はそのままの制服姿で異世界に転生することになった。

 ソフィアさんは「それじゃあ時空神様、よろしくお願いします!」と叫ぶと、急に私の周りが円を描くように光り出す。

 その光に包まれて私は遠くなるソフィアさんの顔色がおだやかだったのが強く脳裏のうりに焼きついた。

 

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