第2話 春の嵐①

 一見、うまくいっているようでいて、実はそうでもない。人間というものは、表と裏がある、いやそれ以上に多面的。その上、この住宅地の住人はそれぞれ癖が強そうだ。これから何が起きるのか、上から眺めてみることにしよう。


 季節は春。そろそろ新入学時期だ。この住宅地にもピカピカの1年生がいるようだが… お、あれは、桜木さんとその娘さんだね。白沢さんちへ行くようだ。

 

 ピンポーン!

「どちら様ですか?」

「近所の、桜木です。すいません、今日はお願いがありまして…」


「突然すいません。4月から、娘が小学校に入学するんです。娘が慣れるまで、白沢さんちのお嬢さんと一緒に登校させていただけないかと思って。」


 なるほど、登校の引率を頼んでいるのか。そういや、白沢さんちには桜木さんちより1学年上の娘さんがいたな。引っ越し時期も桜木さんより、少し早い。


「そうなんですね。うちでよければ、朝一緒に登校しましょ。途中の分譲地で、娘も友達と待ち合わせして、集団登校しているんですよ。確か、その中に新1年生もいると思うんで、紹介しますね。」

 

 白沢さん、あっさり引き受けたな。まぁ、上級生が下級生を連れて登校するのは普通のことか。そういや、春になると街のあちこちで見かける風景だった。


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