第171話 光る君へ

 題名を見て、ピンときた方は多いでしょう。2024年のNHK大河ドラマの題名になります。舞台は平安時代、世界最古の長編小説である「源氏物語」を著した紫式部を主人にした長編ドラマになります。僕はこれまでに大河ドラマを視聴する習慣がありませんでした。しかし、今回は初めから最後まで楽しむつもりでいます。何故なら、飛鳥時代を理解するための重要な資料だからです。


 とは言いつつ、かなり面白いですね。実は、何でもない描写なのに視聴しながら涙が溢れてくるのです。けっして感動的なドラマが演出されているわけではありません。それなのに、当時の人々がこのような生活をしていたのかと感じ入ると、どうしても泣けてしまうのです。好きな人に素敵な和歌を送るために、ズルいと知りつつも和歌の代行を頼んだりするシーンがあります。やっていることは恋愛を、お金で解決する行為なのに、そうした人間臭さが愛おしい。


 他にも、市が開かれている辻中で、朝廷を悪辣に風刺した演劇が庶民によって行われていました。劇中の演者は紙で作った仮面を被っています。その仮面が、奈良の正倉院展で展示されていた仮面とそっくりでした。時代考証がとても丁寧で、そうした細部の作り込みに感動してしまいます。


 平安時代は、文字文化が発展した時代です。対して、飛鳥時代は、渡来人を中心とする一部の人しか文字を使っていません。なので、飛鳥時代を感じるための直接的な文献は存在していません。同じ時代ではありませんが、平安時代を参考にしながら飛鳥時代を想像するしかないのです。


 平安時代と飛鳥時代を比較した時、共通する文化がいくつかあります。藤原道長は天皇の外戚として摂関政治を行いました。この摂関政治のルーツを探っていくと、飛鳥時代に活躍した蘇我氏にたどり着きます。摂関政治を理解するうえで大切な風習に「妻問婚」と「和歌」があります。妻問婚に関しては以前にも記事にしたので詳しくは説明しませんが、当時の家庭の在り方は一家団欒ではありませんでした。妻の家に夫が通うのが通例なのです。縄文時代から続く妻問婚の風習を知っていないと、当時の男女関係の複雑さは理解できません。


 和歌の重要性は、特に理解する必要があります。バブル時代のイケてる男は3高でした。高学歴、高身長、高収入です。対して、平安時代のイケてる男女の基準は、和歌の良し悪しでした。相手の心に届く和歌を創作することに、当時の若者はセンスを磨いたのです。それは、天皇の婚姻関係でも重要なことでした。和歌が下手くそな男女は見向きもされない。和歌の上手さが恋愛を制するのです。僕なりの理解については、以前に紹介した「歌垣」の記事で少しばかり紹介しました。この大河ドラマで、「歌垣」をどのように表現するのかは、とても期待しています。


 偉そうに、聖徳太子の小説を書くと叫んでしますが、当時を理解するためには全方位で勉強する必要性を感じています。歴史的流れは勿論のこと、当時の思想や政治形態、それに衣類、食べ物、住居、水田文化、祭祀、鍛冶、疫病、恋愛感情、性生活、巫女の存在、貨幣のない経済社会、仏教思想、古墳の建造、寺院の建設と知りたいことは沢山あります。そうした中で和歌も知りたい。これに関しては全くの勉強不足です。実は、源氏物語も現代和訳を全巻購入しましたが、まだ1巻の途中です。道程はとても長い。聖徳太子の小説が上梓されるのはいつの事やら……。

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