第141話 進撃の巨人が終わりました
有名な作品ですから特に僕が紹介するほどの事もないのですが、諫山創の漫画をアニメ化した「進撃の巨人」のThe Final Season完結編を視聴しました。最後は、泣きながら観させていただきました。大変に素晴らしい作品です。アニメの制作に関わった関係者の皆様、更には作者の諫山創先生、お疲れさまでした。この作品の素晴らしさを語るのはとても難しいことなのですが、僕なりに咀嚼してその原因を探るのは創作の力になります。ネタバレにならないように言語化してみたいと思います。
まず最初に注目したいのは、第一話から最終話までテーマが一貫していることです。テーマがぶれないというのはとても重要なことです。人気作品であるがために、延命要請を受けてテーマがぶれてしまった作品は沢山ありました。出版社側からすれば、人気作品の連載が続けば儲けになります。その儲けが作者の収入に転ずるので致し方のない所もあるのですが、過度な延命が名作を駄作にしてしまっては元も子もない。そのギリギリの線を守るためには、せめてテーマだけは守って欲しい。
進撃の巨人において一貫したテーマは「駆逐してやる」です。主人公のエレンは、目の前で母親が巨人に食べられてしまいました。その怒りから発した言葉なのですが、そのエレンが物語の序盤で巨人化してしまいます。主人公自らが駆逐すべき巨人であるという事実が、物語をミステリーに変えてしまいました。
――巨人とは、一体なんなのか?
進撃の巨人の物語を前半と後半で分けるとすれば、前半の小テーマは巨人の秘密についてです。謎であった巨人が存在する意味について、読者に開示されていきました。前半の最後で、エレンは全てを理解します。理解した上でミカサやアルミンそれから調査兵団の仲間たちと、エレンは袂を分かちました。その後のエレンは問題行動ばかりを繰り返します。ミカサを始めとする仲間たちはエレンの事が分からなくなりました。後半の小テーマは、エレンの秘密になります。
進撃の巨人の連載は、2009年10月から始まり12年掛けて連載されました。テレビアニメは2013年から始まり2023年に終了します。長い長いこの物語が終わりに近づくにしたがって、最初から謎だった伏線が次々と回収されていきました。その爽快感は、筆舌に尽くしがたい。物語は途中で二転三転していきます。まるでジェットコースターのようでした。それでもテーマはぶれていません。それが「駆逐してやる」なのです。
この事実から推測できることは、物語全体の構成は最初っから決まっていたということです。まるでパズルのように絡み合った伏線を随所にちりばめて、且つ物語が破綻しないようにまとめ上げていく。天才としか言いようがない。
――聖徳太子の物語を書くんだ~。
と僕は偉そうに言っていますが、何だか恥ずかしくなってしまいます。ところで、原作者が説明した内容ではないのですが、進撃の巨人は北欧神話をベースにしているようです。巨人やユミルまたラグナロクという終末の世界観が、進撃の巨人では表現されていたからです。物語を創作するうえで、古典を勉強するのはやっぱり大切だなと思いました。
――この世界って何?
――人間って何だろう。
こうした普遍的な問いかけは、現代も古代も変わらないと思います。古典をベースにしながらも、現代の僕たちが感動できるのは同じ人間だからです。僕も、もっともっと勉強しないといけないなと感じた次第です。
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