華の守護者 ~ 猫の恩がえし ~
神無月そぞろ
妖ものがたり 猫又
月夜の怪
春月の河川敷(一)
ここ数日はうららかな日が続いている。
日中は冬の厳しさが弱まり、木を見れば
昼の河川敷は子どもたちの声でにぎわうが、夜の
人には不便な闇夜だが生き物たちには関係ない。草木に囲まれたジャングルの中で
捕食者は闇にまぎれて獲物を追っていく。音もなく接近すると一瞬で捕らえた。捕まったものは声をあげることもなく生涯を閉じた。
草木の間で弱肉強食がひっそりと繰り広げられている。別に特別なことでもなく誰も気に留めることもない、多摩川沿いの緑地でずっと続いている静かな夜の世界。
ところが
暗がりから話し声がしている。
「どいてくれないか」
「この先にある橋はワシのものだ。橋は通させないぞ」
「別の橋でも同じことを言っていたぞ」
「おまえが通ろうとする橋はみんなワシのものだ。
使わせる橋はない。とっとと消えろ」
橋を渡ろうとすると立ちはだかって因縁をつけてきた。争いを避けるため別の橋へ移動しても同じ態度を取り続ける。三度目は橋へ着く前に進路をふさがれてしまった。
(嫌なやつに出くわした。
川さえ越えれば23区へ行けるのに、どうしても通す気はないのか!)
いら立って歯を食いしばって
これまで我慢してきたけど、もう限界だ。地面を蹴って飛びかかった。
「キイィ―――ッ!!」
いきなり高い音がしたので動きを止めた。辺りの様子をうかがうと、草をかき分ける音が聞こえる。それだけでなく、何やら奇妙な音も交ざっている。
音はあちこちから聞こえ、増えながら近づいているみたいだ。
雑草が茂る中に影が見えた。影はキィキィと耳障りな音を発しながらすばやく動いている。草間から影が一つ飛び出してきた。
(ネズミ!?)
地面に現れたネズミはこれまで見てきたネズミと異なっている。走る姿は大きく、体長20センチほどある。
(こいつはドブネズミだ!
本来なら夜に
ネズミは草間からどんどん出てくる。すべてドブネズミで同じ方向へ走っている。先頭を走っていたネズミがいきおいをつけて飛びかかってきた。
ネズミが飛びかかった先にいたのは一匹のネコだ。先陣を切ったネズミを皮切りに、ネズミたちは次々とネコへ襲いかかっていった。
ネコの体にネズミの歯が次々と食いこむ。体のいたるところにネズミが張りつき、ネコは痛そうに顔をしかめた。しかし体から血は出ていない。
月夜の河川敷にいるネコは明らかに普通ではない。大型犬ほどのサイズがあり、体はうっすら発光している。
二つに分かれた長い尾を振ると、ネコの
ネコはすぐさま前足を振り抜いた。空間を裂く音のあと、ぼとぼとと地面に小さな塊が落ちた。周辺に赤が飛び散って血のニオイが広がっていく。
仲間の体がばらばらに崩れたのを見て、走っていたネズミたちの足が止まった。視線はネコに釘づけで、突き出された前足の爪には赤い
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