嘘で、本当で、嘘で、

亜凪

第1話 新しい趣味と彼と嘘

私、は3つの名前を持っている。

1つ目は 白旗 和子 という本名。

2つ目は しゃーく というゲーム内での名前。

3つ目は___




「ッダー!!ダメだ。勝てん。」

最近始めたオンラインゲームは、チームを組まないとどうやら上位に組み込むのは難しそうだ。

「…ボイチャ繋げるか…?」

私は昔から通話が苦手。

あまり電話をする機会がこれまでに無く、なんか緊張してしまう。

これまでに何度か通話を繋いでみた事はあるが

あまり話せないし、なによりゲームが下手すぎてルームから追い出される。

「まぁ…またダメだったらもう辞めよ。」

ダメでもともとで掲示板に書き込んでみた所に、

一通のコメントが来た。

「よろしく…お願いしま…す…っと」

自分のIDを伝え、いざ通話。

「はじめまして。お願いします。」

「なんて呼べばいいですか?」

と、当たり障りのない会話をする。

「よろしくお願いしますー。あ、中原って呼んでください」

そんな会話をしていたら、中原のフレンドが1人・2人と入ってきた。

(複数人なのはちょっと安心。)

と一息ついて、いざゲームスタート。

案の定やらかした。

「大変申し訳ありません…」

中原「気にしないでくださいwww自分もあそこはすみませんw」

中原の周りのフレンドも私を攻めることなく、

優しく接してくれた。

こんな事は初めてで、いままで暴言を吐かれたりしていたのが嘘のようだ。

通話しながらゲームをするのがこんなに楽しいとは…。

中原さんたちとはまた次の日もゲームをする約束をして終わった。

「楽しかったぁ。これからも仲良くやっていけたらいいけど…」

?「終わった?」

「あ、うん」

私は彼氏の家にほとんどいる。

実家に帰ることは少ない。

勿論電気代とかは彼の親に渡していた。

彼は、バンドマンでフリーター。

高校は中退しており、フリーターというか…

現時点働いていないのでニートって言った方がいいかもね。

彼氏とは付き合ってもうすぐ2年。

順調のようなそうでは無いような。

まぁ2年も経ったらそうなるよね。

彼はそこそこ兄弟の多い家庭に産まれて、

父・母・弟3人・妹1人・彼。の7人家族。

家庭環境もまぁ複雑で。

そこも追追話しますね。


次の日__


「もうまじ本当にごめんなさい」

中原「そういう日もあるww

な、上杉。」

上杉「うん、俺も別に上手い訳じゃないし」

「ありがとう…」

同じゲーム仲間の上杉は、大学4年生。

中原の昔からの友達らしいよ。


ゲームが終わったあとに声をかけてくれて

中々上手くできない私に、中原が個別で色々教えてくれたりした。

(優しいなぁ。)

と、最初はそれくらいにしか思っていなかった。


次の日もその次の日も、私は飽きずに毎日そのゲームをいつもの仲間とやっていた。

そうなると彼氏と話す時間も減っていく。

正直彼の事は少し冷めかかってきていた。

バイトしても家にお金を入れないといけないからと言って働く気が失せて現在彼は働いていない。

まぁだからお金が無いんだけど、

月に1回親にお金を渡す日に色々言い訳を考えて彼もイライラし、雰囲気が悪くなる。

酷い時は私が貸していた。

彼は実家暮らしなのでずっと家にいると働いていないことが親にバレる。

バイトがあると言って働いてるふりをし、5.6時間外にいた。

私もそれに何度も付き合わされた。

どれだけ寒くても、暑くても。

付き合わないと機嫌が悪くなる。

やっているバンドのライブ代も私が払う。

もちろん渡してはいけないことも頭では分かっていた。

でも、渡した方が雰囲気がいい。

余計なストレスを感じなくなる。

彼のためというより、今考えると自分のためにおかねを渡していたのかも。


そんな中唯一時間を忘れられるのがゲーム。

イヤホンをしてしまえばもうそこは私と中原達との楽しい空間。

この感覚が忘れられなく、みるみる沼に入っていった。



何週間か経ち、中原達との中も深まった。

それは不意の出来事だった。


中原「てか、なんでゲームの名前しゃーくなの?」

「んー、理由はないかな。なんとなくだよw」

上杉「本名文字ってるとかじゃないのね」

「違う違うw」

中原「ちなみに上杉の本名は、上杉蒼太だよ」

上杉「なんで言うんだwwww

やめろよ中原誠」

中原「おめーも言ってんだろwwww」

そんなやり取りの中笑っていたら

上杉「しゃーくは?」

「え?」

上杉「本名なんていうの?w」


この時私の頭の中はフル回転。

本名を教えるという大きい括りで言うと、抵抗は何もない。

だが、何が嫌かって言うと、

私は今時のキラキラネームとは程遠い「和子」という名前だ。

この名前に昔からコンプレックスを持っていた。

小学校の頃から古い名前とバカにされてきたからだ。

この流れで言わないとノリが悪いと思われる。

でも言いたくない。

その時私は昔から憧れていた名前を思い出した。

そして___


「玲奈。白旗玲奈。」


私は今が良ければそれでいいと思った。

どうせバレない。

まぁそれはバレないだろう。

住んでるところもおそらく違うネットの人に嘘をついたって。

ゲームに本名なんて関係ないし。

後々自分を苦しめるだなんて知らず。

いや、苦しいのは自分じゃなくて

相手だと知らずに。

私は嘘をついた。


これが私が玲奈として生きていく話の始まり。

嘘の始まり。

私がどれだけ醜く生きていたか、

いや、生きているか最後まで見届けてくれると光栄です。



続く。

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