第16話 一時停止

朱音との一件があってからは、刹那はシャーマンとしての活動を一旦、停止し保留とした。


と言っても力を失ったわけではなく、少なからずアクセスをしてくる霊魂はいた。


その中、いよいよ大学の卒業が迫ってきた頃、先ず3級整備士の資格の取得に努め試験を受けた。


そして、大学卒業後は、小さな自動車工場に勤めて、3年後、2級整備士の資格を取得していた。

理由としては、仕事の幅を広げる為だ。


これは持ち霊の高野の為でもあった。


そして、28歳の時、朱音に婚約を申し込んだ。


その頃、朱音は得意な計算を活かして会計処理の事務員として働いていた。


二人は交際から約8年の時を経て、結婚をした。


そんな時である。刹那の働く工場に1台の事故車がレッカーされ届いた。

ボンネットがへこみ、フロントガラスにはヒビが入っている車だった。


誰もが人身事故の車だろう。と思った。

が、刹那だけは違った。

車のフロントからは通常は出ていない煙りが出ていたからだ。


それでも修理に入りながら悟ルに、その気配を探らせた。


すると、女性がレイプをされ木刀で頭を殴られている映像が頭に流れた。


そこへ高野が声をかけてきた。


・・刹那くん、エンジン部分の下。見てみて・・


刹那 ・・・オイル漏れか?・・・


刹那が、エンジン部分の下を確かめると、徐々に巻き付いたかのような黒い糸上のものが、数本、まとまって出てきた。

恐らく人の髪の毛だ。

それから、赤いマニキュアが塗られた女性の指と思われるものが出てきた。


刹那はすぐに警察へ電話をした。


警察が駆けつけて、エンジン部分の指紋採取や血液反応の検査を終えて、刹那が取り出した指と髪の毛を回収していき、車の所有者の個人情報を開示した。


そこへ、先輩の有馬が声をかけてきた。


今日は厄日だったな。俺もさ、ひっかかった猫の頭を取り出した事とかあるけどさー、あれはねーよな。


本当、びっくりしました。猫も最悪ですよね笑


次の休みはお払いにでも行けよ!


はい♪ありがとうございます。


そして、その日は残業も無く帰宅が出来た。


朱音 おかえり♪


刹那 ただいま♪


刹那は朱音に今日の出来事を話した。


朱音 やめてよー。食事中に~。


刹那 あっ、ごめん笑


朱音 そういえばさ、付き合った時の出来事、覚えてる?


刹那 うん。でも、あれは忘れた方がね?良くない?


朱音 今だから、大丈夫だよ。あれさ、結局、何だったんだろうね?

結果的にはアタシは刹那くんとこうなれたけど♡


刹那 あーゆうのは無くても付き合えたんじゃない?笑


朱音 そーかもしれないけど、無かったら帰ってたでしょ?


刹那 そうだね笑 俺、鈍いようだから。


朱音 でね、ちょっと調べてみたの。

これ、見て。


朱音が1冊の本を広げて見せた。

そこには、悪霊と書いてあった。


刹那 うわー、これも最悪だね。じゃ、俺と朱音ちゃんをくっつける幸せの幽霊じゃなかったんだ!じゃ、何で現れたんだろ?

あそこが事故物件だったのかな~?


祖母・・・刹那、あやつ、悪霊にしては色々な霊気を放っていたよ・・・


刹那・・・分かってる。だから、不思議なんだよ。朱音を狙ってきたんなら、俺が退治しようと考えてたから。

でも、あれ以来、現れねーし。


朱音 刹那くん?疲れてる?お風呂、出来てるよ。


刹那 そ、そうだね。ちょっと入ってくる。












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