オリンピック魔法代表
@tairou
第1話
2220年、東京オリンピックから200年後の世界。人間の飽くなき探究心によって、この200年の間に技術は進化し続けたら、どうなっているのだろう?
車は空を飛び、エレベーターでお手軽に宇宙へ行けるようになり、普通の家庭でも一家に一台、青い狸のお手伝いロボットを持つような、そんな便利でスタイリッシュな、誰もが理想としていた未来になっているのだろうか?
それとも、哀れな人類は過ちを犯し、人が簡単には住むことのできないような、荒廃した世界で、ただただ救世主を待ち望んだり、全ての終わりの破滅に向かっていくだけの存在になっているのか?
答えは簡単だった。
十二支が十二回以上回ろうが、
そんな極端な未来は訪れないのであった。
2000年初期の速度と勢いで、
科学の力が進歩しつづけていれば、
どうなっていたかわからない。
今言ったような、極端な変化もありえた。
だが、科学は衰退した。残念ながら、必要が無くなってしまった。次元を超えたポケットも、ひみつな道具も、奇天烈な発明も、ついでにからくり侍も。
それは、なぜか?
人間はみつけてしまったのだ。
試行錯誤と創意工夫の末に、これまで、その存在を身近に感じながら、想像することしか出来なかったモノを、手にすることはできなかったモノを、人間の隠されていた能力を解放する術を、人間をやめるための方法をッッ!!
と、大げさな言い方をしてしまったが、200年ぐらいでは、吸血鬼になる方法はまだ見つかっていない、所詮、人間は人間のままだ。
結局のところ、人間が新たに手に入れたモノとはなんなのか?
携帯も、車も、飛行機もいらなくなってしまうような、そんな魔法のようなものがあるのだろうか?
人間が突然に手に入れてしまった魔法のようなモノの正体、それは!!
『魔法』だ。
そう『魔法』なのだ。
人類は『魔法』を手に入れたのだ。
大事なことなので三回言わせてもらった。
冗談?
いや、本当の事なのだ。人類は脳の研究をする過程で超常的な現象を操るための方法を見つけたのだ。
初めは、超常現象を操ることの呼称を、超常現象抑制だとか、略してp.sだとか、第六感だとか、いやいや第七感だとか、偉い人たちがなかなか無駄な議論したようだが、巷では普通に『魔法』と呼ばれるようになった。
魔法が使えるようになるとは、200年前は信じられないだろう。
しかし、人間の歴史の中で「絶対不可能」だったことが、「可能」になったことが幾度あっただろうか?
海の向こうに渡る、空を飛ぶ、月に行く。
これらは、何百年か昔なら「絶対不可能」とされていたことだ。
「魔法」もこれと同じだったというだけ、今では全世界のほとんどの人が魔法を使うことができるようになった。
だが、もちろん人間の能力には、得手不得手というものがある。魔法についてもそうなのだ。ある一定のところまでは、訓練で到達できる。
魔法自体を使うのに必要な訓練は、
「自転車に乗れるようになる」ぐらいの感覚だと思ってほしい。しかし、普通以上に使いこなすとなると、個人差がかなり大きくなる。
そして、そういった「個人差」が大きくなる事柄において、人間は、太古の昔から、自然と湧き上がる純粋な衝動に抗うことはできない。
それは、優劣をつけるということ、強弱をつけるということ、雌雄を決するということ、つまり、自分の持つ「魔法」を他の「魔法」と比べるということである。
どちらが魔法をより上手く使えるのか?
どちらの魔法がより強いのか?
比べることにより、他人との違いを見つけ、時には歓喜し、時には落胆する。
しかし、人は生まれた時から幾度かの敗北を味わい、打ちのめされるまでは、誰もがこう考えている。
「僕がこの魔法を1番上手くつかえるんだ。」
とね。
だからこそ、競技としての魔法は非常に人気が高い。
今年は2220年、オリンピックイヤーだ。そして開催地はまたしても日本だ。なんとも誇らしいことだ。そして、ついに!今年から!!新たに追加される新競技として、オリンピックに競技としての「魔法」が追加されたのだ!!!
魔法が発見されてから、何度も正式競技への採用を検討されていた。だが、反対の声の大きさや、ルールの制定の難しさから、正式採用は見送られていた。しかし、今年のオリンピックは、テレビで全世界の魔法使いたちのハイレベルな魔法を見ることができるのだ。
そして、これはオリンピックの正式競技
「魔法」に対して命をかけて挑む人々、
「オリンピック『魔法』代表」
その熱き戦いの日々を描くものである。
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