#18
高校からバスに乗り、下原駅で降りる。
僕が帰るには後2回乗り換える必要があり、家に近づく程、もともと少ないバスの本数が減っていく。駅に長くいると遅くなるどころか帰れなくなる為、まず放課後寄り道をすることは無い。
だから放課後デートとか言われても、何をするのか見当がつかないのである。何処かに遊べる所があるのか知らないし、あったとして僕が帰るまでに間に合う場所、内容なのかも分からない。
やはり白渡の目を盗み、脱走するべきだろう。そう分かっているのだが、奴は教室からずっと襟を掴んで離してくれない。
「おい...何処まで連行する気...?」
「伊折君が望むなら、シダーデ・ヴェーリャの観光とかでも良いよ?」
「はい...?とりあえず近場にしてくれ...それと離せ...」
こいつなら本当に大西洋の島にまで飛びかねない。でも行くなら1人で旅してくれ。
白渡は襟から手を離しながら、話を続ける。
「無難にそこのデパートでいいんじゃないかな、確かあそこは昔カップル限定セールをやってて、私達は一緒に買いに行ったよね」
「カップル限定?ああ、始業式の日にお前が言ってた奴ね。僕を褒めても愚痴しか出ないのにな」
目の前には小規模なデパートがある。小規模とは言うが、南葛城のどの建物よりも大きい。
セールと言えば、こいつは僕が"彼氏役を嫌がらずに引き受け"たとか話していたが、全くの嘘。あの日は家で勉強していたのに、急に白渡が押入って来て車に乗せられ、強引に店に連れてかれたという流れだった。当然僕は猛抗議したが、逆らえる程の力は無かった。
というか、あの時の店ってそこなのかよ。当時は羞恥心で周りの事とか見てられなかったからなぁ。流石に今はそんなことないが。
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