#13

「はーい、座ってー」


 誰かが着席を呼びかけながら入ってくる。


 2人から視線を逸らして前を見ると、眠たそうにした教師が教壇に立っていた。


「私は監査委員会担当の児玉、委員長と副委員長はさっき決めたから後は頼むねー」


 それだけ言うとさっさと出て行く児玉先生。仕事の説明もせずに帰るなんて許されるのだろうか。いや、いいけど。


 すると、2人の生徒が立ち上がり、前に出るやいなや話し始めた。


「やっほー!あたしは監査委員長になった、3年3組の朱膳寺苺(しゅぜんじ いちご)だよ!」


「俺は監査副委員長の3年2組、紺迫柾(こんさこ まさき)だ。よろしく」


 挨拶をしているが、去年僕は委員長どころか他の委員と一度も絡んで無い筈だ。適当に説明して早く終わってもらいたい。


「色々緊張してるかもしれないし...新入生の皆んなもいるから、全員自己紹介しよっか!じゃあ廊下側からよろしくー!」


「自己紹介?そんなことやってる暇ないぞ」


「いーじゃん、上級生も新入生の事知りたいだろうし、ここで運命の出会いがあるかもしれないじゃん!さぁどうぞー!」


 唐突に我々も自己紹介をすると決まる。絶対要らんだろ。時間の無駄だ。


 渋々と話し始める1年生に続いて、1人1人自己紹介をしていく。まともに聞いてないので、今話している奴の名前も分かってない。


「伊折君」


「...どうした」


 前の席に座っていた白渡が声を掛けてくる。


「伊折君の彼女って名乗っていい?」


「先に確認したのは殊勝だな、副委員長の彼女とかならいいぞ」


「そんな...仕方ないから伊折君のフィアンセにしとくね」


 こいつ頭おかしいよな。知ってたけど。

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