#9
翌日、テスト返し。
数学は相変わらず平均を下回りそうな点だったが、赤点にならなきゃどうでもいい。
それより、人が寄っている彼女の方に目が行ってしまう。
「蓮ちゃん91点!?このテストで?」
「国英も9割だったよな?えぐぅ...」
理数好きな奴らの尊敬を一気に集める白渡。教師もやたらと褒めていてうるさい。
彼女の顔は見えない。あいつは何を考えているんだろうか。少なくとも、僕のことはちっとも眼中に無いのは確かだろう。
中学時代の前半までは優秀な生徒として過ごした僕だったが、転校後、彼女はその立場を軽々と奪っていった。
僕もテストでは9割前後ばかりとっていたはずだったが、満点が頻発する彼女に一度も勝てなかった。しかも、僕が蔑ろにした交友関係も充実させ、部活の卓球も全国レベル。学級委員や運動会の実行委員などにも取り組み、教員からの評価も相当なもの。彼女こそがまさに優等生であり、僕はせいぜい"白渡の次に勉強ができる奴"でしかなかった。
まぁ、問題集の暗記で固めた嘘吐きには、そんな処遇が適当だったのかもしれない。
だから、僕は最早クラスのはみ出し者として放っといてもらった方が気が楽だった。なのにどうして彼女の絡みに付き合ってしまっているのか、未だに理解出来ない。
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