(三)-4

 彼女が部屋に入ってきた。そしてベッドにはいり、横になった。

「あのクソ親父。死んじまえ」

 彼女がそう呟くのが聞こえた。その後、部屋は静かになった。


 朝起きると、彼女がキッチンに立っていた。

「あ、起きた。おはよう」

 そう言って僕の方を見た。二次元のキャラクターにはない、かわいいスマイルだった。

 昨日のことはもうすっかり忘れてしまったのだろうか……。

 一瞬、このかわいい笑顔が毎日ずっと見ることができたら……、なんて想像してしまった。

 いやいや、彼女には他に男がいる。こんなにかわいいんだ。僕なんかと段違いにモテるはずだ。それにもかかわらず、こんなところにいる方がおかしい。そう思い直すようにして、僕の都合のいい妄想を打ち消すよう努めた。


(続く)

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