(三)-3

 真夜中になって、物音でふと目が覚めた。部屋の玄関ドアが閉まる音がした。ベッドの上を見てみると、彼女の姿はなかった。

 僕は毛布をどけて立ち上がり、玄関へ歩いて行った。ドアスコープを覗くと外には誰もいなかった。

 そっと玄関ドアを開けて左右を見てみた。

 少し外れたところから声がした。部屋から出るとアパートのすぐ近くの交差点のところで、彼女が電話をしていた。

「だから、アンタには関係ないでしょう」「私には私の自由があるの。お父さんの勝手にはさせないから」

 そんなことを話していた。そこで話は終わったようだった。僕は慌てて部屋に入って毛布を頭から被った。そして耳で彼女の動向を観察した。


(続く)

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