(一)-3

 でも先輩は「あ、いや、何でもない。先に行ってて」と言った。

 そう言われて二人組は、したたり落ちるほどの不審感がたっぷり含まれた、突き刺さるような視線で僕のことをにらみながら、改札口の方へ歩いて行った。

 先輩はそれを見送ると、「ちょっと」と僕の手首を掴んで、改札の方ではなく、ホームの端の方へ僕を引っ張っていった。

「ねえ、おなか空いてない?」

 先輩はそう言ってきた。僕は朝ご飯を食べていなかったので、「ええ、すいています」と答えた。

 すると先輩は「じゃあ、ごはん食べよう」と言って僕の手首を掴んだまま改札の方へ僕を引っ張っていった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る