二人のカンケイ~歪な私たち

是宮ナト

第1話

 「あー……私ってバカだな」

 三月の中旬、卒業式を迎えた私の心は吹雪のように大荒れで冷たかった。

 遠くで彼女と祝福されている彼を見ると、怒り悲しみ自分の中の負の感情が爆発して今にも気が狂いそうになるので、やることを済ませた私は家に帰って布団の中に閉じこもっていた。

 布団の中にいると体温の温もりとともに色々な思いでがこみ上げてくる。高校生になって彼と出会って快楽を求めあう関係になったある日、山桃メイは死んで蘇った。


 「ごめん。やっぱ無理だわ。別れてくんない?」

 突然、言われた言葉に理解が追い付かなかった。当時中学生だった私には彼氏がいた。長身でスラっとしていてクラスで別格にイケメンで見た瞬間、好きになった。彼に気に入れられようと髪を長髪にして眼鏡をかけて彼の理想の姿になってようやく彼と恋人関係になった。恋人になってから私は彼の望むことをすべて叶えてあげた。彼の行きたい所、欲しい物、収まることを知らない性欲、すべて満たしてあげた。

 それなのに、何気ない帰り道に私の顔を一切見ずに彼は飽き飽きとした顔であくびをしながらだるそうに言った。

 理解を拒んだ脳が言葉の意味を理解した瞬間、彼への怒りと疑問が私の中を一気に支配した。気づいた時には彼に詰め寄り怒号に近い声量で疑問を投げかけてた。

 それを聞いた彼はうんざりした顔をして「だりぃんだよ」と呟き私を突き放してそのままどこかへと行ってしまった。後から聞いた話だけど彼は私と付き合う以前に女性と交際していて、私とは遊び……つまり、好きなものは何でも買ってもらえる金ずる兼好きな時に性欲を満たせる股の緩い都合のいい女としてずっと見られていたことになる。

 それを聞いた時ははらわたが煮えたぎるぐらい怒りに震えて、包丁で刺してやろうと出刃包丁を購入したけど、親友のライカに止められて未遂に終わった。

 それから私は彼好みの清純な黒髪ロングの落ち着いた女性をやめて、髪はボブヘアにして金髪に染め、長くてダサいスカートはパンツが見えそうなくらい短くして、気の済むまで涙を流しながら暴飲暴食して、本当の自分を解放した私はただただ荒れていた。

 そこから何事もなく高校受験と卒業式を迎えた。今まで彼の好みに合わせていたおかげで、勉強もそれなりにできるようになって、それなりに良い高校へと進学できた。それに関しては彼に感謝しかない。ちなみに親友のライカも同じ高校へと進学できた。なんとか友達ゼロ宣言は回避できたみたいだ。

 高校に入学してからは基本ボッチだった。金髪にして態度もふてぶてしいからか勝手に不良キャラ扱いして誰も話しかけなかった。なんとなく予想してたけど、ここまで色物扱いされると少ししんどい。今日もいつものように授業が終わってすぐに帰ろうと階段を颯爽と降りていると誰かとぶつかった。

 私は大丈夫だったけど、ぶつけられた側は尻もちをついて痛そうにしていた。流石の私も申し訳ないと思って、「ごめん。大丈夫?」と声をかけた。

 「う、うん。なんとか……」

 顔をあげた男の子は黒縁メガネをかけていて髪も目が隠れる程長くていかにも陰キャって感じの子だった。

 

 これが私と彼の出会いだった。

 

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