大した能力もない凡人風情が

 どっかの独裁者様は、自分以外の人間の命の価値を勝手に決めたりするかもしれないが、大した能力もない凡人風情がそんな独裁者様になれるわけないだろ?

 夢見てないで現実を見ろよ。

 自分は独裁者様みたいに、自分人間の命の価値を決めることができるような立場にないってことを。

 だから俺は、<自分とは別の人間>である敦輝の命の価値だって、勝手に決めることはない。

 自分の子供だからといって自分とは別の人間である子供の命の価値を勝手に決めるような親に育てられたから、自分の親の命の価値を勝手に決めるような人間になったと、なぜ分からない?

 大した能力もない凡人風情の親が<自分とは別の人間>である子供の命の価値を勝手に決めようとするから反撃を受けたりするんだろう? しかも子供から反撃を受けたぐらいでオタオタするようなら、最初から偉そうになんかしなければいい。

 きちんと身の程をわきまえていれば、普通の子供はそんな親の振る舞いを見てわきまえた振る舞いができるようになるはずだけどな。

 自分自身を客観的に見ることができない親の子供は、やっぱり自分自身を客観的に見ることができない。

 <自分の支配的な振る舞いを客観的に見ることができない親>

 の子供がすごく自己肯定感の低い消極的で僻みっぽい性格に育っていたとしても、

『自分自身を客観的に見られない』

 という点においては親の完全なコピーだよ。

 敦輝と違って<普通の子供>として生まれてこれたのなら、なにがしかできることはある。『自分には何もできない』だとか思い込んでる時点で自分自身を客観的に見ることができてないということだ。

 俺が担任を受け持っているクラスの生徒の中にもなんかそれっぽい感じのがいるが、

『自分には何の価値もないから』

『自分には何もできないから』

 みたいな態度でいられると、正直なところイライラする。

『お前らは敦輝と違ってまともに生まれてこれたんだろう!?』

 って感じでな。

 でもな、客観的に考えればそんな事情はあくまで俺の方の個人的な都合でしかない。生徒には何の関係もない話だ。それで生徒に八つ当たりするとか、そんな振る舞いになんの正当性があるって?

『自分は可哀想なんだから許してください!』

 ってか?

 いやいや、そんなこと言えばそれこそ、

『甘えるな!』

 の大合唱になるだろう?

 そのくらいのことは普通に物事を考えられれば簡単に分かるはずだ。だから俺も、そんな理由で生徒に八つ当たりなんかしない。

 当たり前だろ?


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