精霊術師の奇譚史 私は一体誰なんでしょうか
久瑠璃まわる
第一章
プロローグ
「それじゃみんな!始めるよ!」
「うん」「......」
あれ?仙莉が話さない。担花はニコニコしてるのに。
真剣に私の顔を見てどうしたの?私の可愛さに気がついた?
「仙?どうしたの?見惚れた?」
「いや全く。その元気が最後まで続けば良いなって」
あぁ、そっちか。いやまぁ、この中で1番点数低いの私だからね。それに殆ど、仙莉と担花に教えてもらう予定。
とはいえ集中力が長く続く気がしないので、その指摘はごもっともなんですよ。
苦笑いするしかない。
「ねぇ、一華ちゃん。これ以上赤点取ったら携帯没収されるんでしたよね?」
「確か。携帯を買ってもらう条件に『赤点が続いたら没収』って言われてたよね」
自室の中央にある四角いテーブルに教材やノートを並べながら、担花と仙莉が話している。
1回までなら赤点を許してくれる所が、私の学力の無さを物語ってて辛いわ。
「そうなの!少し携帯触りすぎたかなって思うけど、お母さん酷いよね!」
「......別に、お母さんは酷くないと思うよ?」
「妥当じゃないか」
味方は!私の味方は居ないのか!
やけになり頭を抱えながら首を振る私にジト目を向けられ、居心地が悪くなり天井を仰ぐ。
う〜、勉強したくないよ!!
高校1年になって初めての期末テスト。中間で赤点があった以上、ここで頑張らないと親が怖い。怒られるのは怖いし、勉強を教えてくれてる2人に申し訳ない。
中学生の時は、2人の手助けもありギリギリ赤点を回避していたけど、高校に入り携帯を買ってもらった後は、より勉強に身が入らなくなってしまった。写真を撮って加工したり、反応貰うのが楽しくてついね。
「......ちか?一華?聞いてる?」
「?あぁうん!ぜんぜん大丈夫。ちゃんと聞いてるよ」
「ふふっ、始まって2時間は経ったからね。集中力落ちてきたよね」
「んー、もうすぐ御夕飯でしょ。あと少しの我慢よ」
母親から「勉強頑張るんだから、手伝わなくていいわよっ」と言われている為、いつもより時間がある。まじかぁ。
「あっそうだ!ねぇ2人とも、最近ハマってるラノベが有るんだけど聞いてくれる?」
そう言って担花が1冊の小説をカバンから取り出して机の上に置いた。
「『精霊術師の奇譚史』って本なんだけど、コレが私の中で一番来てるのっ!作者の実体験が元になってる話らしくて、1人の少女と1体の精霊が記憶を」
「一華!みんなも、ご飯できたわよ〜!」
話始めると中々終わらない担花の熱弁が、お母さんの声量にかき消される。
もうそんな時間か。
「むぅ〜!」
「拗ねないで、後で聞いて上げるからっ」
「そうだね。一華のお母さんって、料理上手だよね羨ましいよ」
「私もある程度なら作れるよ?」
別々な感想をこぼし腰を上げ部屋を出ようと扉に手を掛け......
バチッ
「え?なになに!?電気切れたよ!?!!」
「!?!?一華ちゃん仙莉ちゃんどこ!?」
「落ち着いて2人とも、ただ電気が切れただけよ。ブレーカーが落ちたんでしょ?」
それにしては暗すぎる気が。窓もあるのに足元すら暗くて見れないって,そんなことある!?とりあえず部屋から出なきゃ!ブレーカーは台所だったよね。
お母さんが復旧してくれると思うけど、一応行っておこう。
「ちょっと私、台所行ってくるね」
担花が落ち着いたのか、2人からの返事は無い。が、幸い部屋の扉は開いていた。心配だけど復旧が先決かな。ん、あれ?
家の床ってこんなにゴツゴツしてたっけ?そういえば物音も何もしない様な。えまって、急に不安になってきたんだけど。あーもうっ!何が起きてるのっ!
怖さを振り払う様に頭を振る。
歩き出した私の目の前には、規則正しく並べられた石が光っており、私の方まで続いている。その奥に視線をやると大きな扉が閉ざされており......
私の意識はそこで途絶えた。
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