自称『勇者』

第10話

「……テメェ…よそ見とは、良い度胸してるじゃねぇか」


 まだ立ち上がる男に意識を戻し、持っていた銃をすぐさま撃てるようにセットする。


「…………弱者が言う台詞じゃないけどね」


標準を男の額に定め


「……………チッ!」


盛大に舌打ちをした。



「……ああもう!一体!どうして、こうも、不法侵入者が多いんだろう、ね!」



 ジャックは銃を壁に投げつけ、近くにあった椅子を蹴飛ばした。


「……こんなに腹が立つコトは、初めてだよ」


意味が分からずに戸惑う男と女に構わず、ジャックはオンボロなソファに荒く腰を下ろす。


「ヒカル!助けに来たよ!」


その途端に、バァン!、と乱暴に開けられた扉から、複数の人が住居内に雪崩れ込む。


「いつまで経っても帰ってこないから、心配したんだよ!?」


エルフ耳の女が、男を『ヒカル』と呼び、男に飛びついた。


「痛ぇよ、全く……。もう少し落ち着けっての」


 男は溜息混じりにエルフ耳の女の頭をぽんぽんと優しく撫でる。エルフ耳の女は修道女染みた格好をしており、男の(ほぼ自業自得な》怪我を治していく。何処かで見た。この状況。


「ヒカル!ここは私達がなんとかする。だから、その子を連れてここから出て!」


はぁ? 何この状況。ジャックは考えるのをやめたくなった。


「……でも、」


 男はジャックの方を見つつ言い淀む。どうして、クライマックス的な状況になってるのだろうか。


「大丈夫だ!仲間俺達のことを信じてくれ!」


 大柄でいかにもパワーファイターなむさ苦しい男が、男に熱く語る。感情論や根性とかで全部なんとか出来ると思っていそうな、……額に赤い角が2本ほど生えているので、オーガ種だ。


 何だか面倒な事無駄な戦いが増えそうな気しかしなかった。もう休ませて欲しい。あと、戦うんならもう少し面白みのある奴連れてきて欲しい。


「さっさと、消えてくれないかなぁ」


 ジャックは不法侵入の大衆に言い放つ。戸惑う大衆に殺気の圧力を掛け、さっさと出ていくように睨み付けた。


「……興が削がれたんだよ。さっさと消えて」


男は、殺気だけで腰の抜けた仲間達と這々ほうほうていで去っていった。


 伽藍堂になった住処を見回す。破損した調度品が複数に、体液で汚れた床。全部自分がやったわけではないのに他の手下が使えないので、自分でなんとかしなければならない。本当に面倒だ。


「……チッ」


女も、どさくさに紛れて逃げやがった。

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