第6話

扨々さてさて、オレの住処を穢した罰を、」

『——!』


 ジャックの言葉を遮り、女は叫ぶように語り掛けた。


「——今、何て言った?」


ジャックは口元に笑みを携えたまま、目を細める。それを好機と見たらしく、青ざめたままであったが、女は再び口を開く。


「……なるほど、『やらせてあげるから、見逃して』ってコトだね?」


女は必死にジャックの足元に縋り付いた。


「——その顔、可愛いし……ねぇ」


ジャックは女と目線が近くなるようにしゃがみ、女の顔を見る。


「うーん……確かに最近は忙し過ぎて、『そういうこと』もあんまりなかったからねぇ」


 そっと手を伸ばし、柔らかく白い頬に長い指を這わせた。そうすると、女はうっとりした表情で見上げ、ジャックの鈍色の視線と交わった。


ジャックは頬を摩った手をそのまま髪の方へ滑らせ、


『っ!』


頭頂部の髪を、強く掴んだ。


「莫迦な事を言うんじゃないよ?」


驚きで歪む女の顔に、自身の顔を寄せ低く答える。仄暗い鈍色の目が、女を射抜いた。


「誰が、君みたいなアバズレを相手にしたいと思うかなぁ?」


女の髪を掴んだままジャックは身を起こし、女を引き摺り上げる。


「まあ、確かに君はそこいらの花売りよりは、いい顔はしているよ。……でもねぇ、顔なんて、金さえ払えば如何とでもなるんだよ」


青ざめる女は謝罪の言葉を吐く。


謝罪そんなのなんて、どうでもいいんだよ」


暴力いまが一番楽しいからね、とジャックは愉悦に歪む顔を隠す事もせずに掴む手を少し持ち上げる。


「その顔、二度と褒められないぐらいに、ぐちゃぐちゃに潰してあげる、よ」


勢いをつけ、ジャックは女を顔から床に叩きつけた。この廃墟の床は板張りの板が完全に腐っており、全く使えないので基礎の石が剥き出しになっている。


『——ぁっ、』


強く床に叩きつけられた衝撃で、女の体が跳ねる。何かが折れた音が聞こえた。


「そうすれば、二度と襲われることもなくなるんじゃないか。オレってなーんて親切なんだろう!」


 ジャックは芝居がかった動作で手を広げ、オレってば優しいよねぇ? と転がる女に笑いかける。


「さあさあ、もっと鳴いてみせてよ」


 最中の時みたいにさ、と、喘ぐ女の腹に容赦なく蹴りを叩き込む。


『ぁ、がっ!』


口の端から泡を吹く女はそのまま転がり、壁に背を強かに打ち付けた。


「まだまだ足りないんだよ、オレをもっと楽しませて、ほら」


 女を乱雑に掴み、床に放り投げる。

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