恋砂時計を逆さまにして

closet

プロローグ

 学校と加賀美 純かがみ・じゅんの実家と私――伊月 雫いづき・しずくの実家の中間地点にある遊歩道で、高校1年の3月4日の夜7時。


 私は純と待ち合わせをしていた。


 大事な話をするために。


 私が階段を上ってガラス張りの道に着いた時、純は既に待っていた。


 純の隣に立って手すりに肘をつきながら、私はため息交じりに言った。


「ねぇ、別れよう?」

「俺は雫とこれからも付き合いたいんだけどな」

「じゃあ、高校卒業した時にまた付き合おう」

「雫はどうして俺と別れたいの?」


 私は本心を言った。


「学校にまともに通ってもいなくて、通ってても保健室登校なのに、それでも付き合ってるって、何か不純だなぁと思って。せめて真面目に付き合うなら、高校卒業してから付き合いたいと思って」

「わかった。話はそれだけ?」

「うん」


 急に腕を掴まれ、キスをされた。


「今のは別れのキスだ。それじゃ」

 

 純は私に背を向けて帰っていった。


 私も純が見えなくなってから帰った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る