第1話:俺のいたって平凡で退屈な日常
『もしゲームの中に入れたら』そう1度でも願った人はこの世に何千人いや何千万人いるだろう?モンスターが彷徨くダンジョン、1つの戦場に放り込まれ行われるバトルロワイヤル、様々な謎が散りばめられた密室など非日常が画面奥には存在する。平凡な日常から抜け出しスリルある日常を送りたいそれが俺の願いでそんな俺の願いが叶い平凡が崩れ去ったのは突然のことだった。
-2032年7月22日都内のゲームセンター-
「なぁあの人ずっと勝ってないか?」
「だよな。次で50人抜きだぞ」
後ろの方で自分の話がされているのを感じながら俺は目の前の画面に集中する。どこにでもある格闘ゲームだ。登校時間まで時間があるから暇つぶし感覚でやっていたのだが、、、
「負けた〜。対戦ありがとうございました」
「よし!次は俺が相手だ!」
このように次から次へと挑んできて中々終わることが出来なくなっていた。
「俺はかなり強いからな!覚悟しておけ!」
「分かりました。対戦よろしくお願いします」
挨拶をしゲームを開始する。自信満々に強いと言っていたがいざ開始すると無駄な動きが多いし何も考えずに技を出していてぶっちゃけ前の人よりも下手だった。あいにく手加減なんてするキャラでは無いので容赦なく秒で負かす。
「な、この俺が負けた、、、だと!?」
「そりゃお前脳筋だからな。逆になんで勝てると思った」
「、、、対戦ありがとうございました」
「あぁ対あり!秒負けだったけど楽しかったよ」
時間を確認すると丁度いい時間だった。そろそろ店を出た方がいいだろう。
「じゃあ俺は用事がありますので、、、今日対戦してくださった皆さまありがとうございました」
しっかりお辞儀をし店を出て駅に向かう。これならいつもより早い電車に乗れそうだ。電車が来るのを待つ間スマホを開きネットニュースを眺める。
【行方不明だった17歳の女子高校生が遺体で発見。自殺か他殺か】
【今月30人目の犠牲者。「朝、自室に見に行ったら血まみれになって死んでいた」と母親は供述】
【度重なる犠牲者。その背景にあるのは携帯ゲーム?】
上から下まで物騒な同じようなニュースが並んでいる。どうやら10代から20代の若者が相次いで死亡しているらしい。そういえば隣市の高校でも生徒が1人亡くなったとか聞いたな、、、。それにしてもなんだよ背景にあるのは携帯ゲームって。ゲームに人を殺める力なんて備わってないっつーの。呆れながらスマホをしまい電車に乗り込む。その時反対側のホームから視線を感じ気のせいだと思いつつも目を向けるとこちら側を見つめる1人の女性の姿があった。ゲームにしか興味が無い俺だが自然に女性に目がいった。忙しく動く人が大勢いる中1人だけ止まりずっとこちら側を見る女性。いるんだけどいないようなそんな感じがした。電車が動き出す。女性はいなくなっていた。
学校に着くとまだ運動部は部活をしていた。心の中で軽く応援しつつ昇降口に向かう。向こうから見知った人物が歩いてくる。
「あ、朔じゃん!やっほー!」
「伊織、まだいたのか」
そいつは俺を見つけるなり走りよってきた。彼女は風隠伊織、俺の幼なじみだ。
「まだっていうかこれが普通なんだよ。そう言う朔こそ珍しい。いつもスリルを味わう!って言って時間ギリギリまで来ないのに」
「誰から聞いたんだよそんなこと、、、」
「朔は今から学校?いいな〜定時制は」
それからも他愛のない話を繰り広げる。そろそろ切り上げて教室に行こうと思った時だった。
「そういえば朔ってこのゲーム知ってる?」
伊織のスマホの画面を覗き込む。キチンと整頓されたアプリの中にそれはあった。
「、、、なんだ?タイトル文字化けしているけど」
黒いアプリアイコンの下には通常タイトルがあるのだがそこが文字化けしていて読めなくなっていた。かろうじてゲームというワードは確認出来る。
「検索しても分からなかったんだよね〜。それでね!このゲーム凄いんだよ!」
そう興奮しながら伊織はゲームを起動させた。すると次の瞬間目の前から伊織の姿が消えた。
「、、、は!?どこいった!?」
辺りを見回すがどこにも見当たらない。
「朔〜!ここだよ〜!」
手元のスマホから声がする。俺は画面を見て目を見開いた。
「い、伊織!?」
画面にはまるで魔法使いのような服を纏った伊織の姿があった。
「えへへ〜凄いでしょ!」
「いやいやいや!どういう原理!?」
今の現代技術はここまで発展していないはず、、、いや俺が知らない所で?俺が混乱してるのを見かねて伊織は手元で何やら操作しだした。画面が一瞬光りそれがおさまると目の前には制服を着た元の伊織が立っていた。
「たっだいま〜!やっぱ混乱するよね〜ごめん!」
「いや大丈夫だよ、、、確かに凄いな。俺も遊びたくなったんだけど後でリンク送ってくれないか?」
「あ〜そうしたいんだけど、これ知らないうちにインストールされててさ調べても何もヒットしないんだ」
「知らないうちにって疑わなかったのか?悪質な詐欺とか乗っ取りの可能性が」
伊織は昔から用心深いとこがあるからこういうの真っ先に疑いそうなのに。
「もちろん疑ったよ。最初はアンストしようとしたし。でもアンスト出来ないし製作者は不明だしでさ〜諦めた!まぁ乗っ取られてもなんとかなるでしょ!」
そうだった。伊織は楽観主義でもあった。
「お前な〜変な請求きても助けないからな」
「え〜そこは助けてよ〜薄情者〜」
ポコポコ殴ってくる伊織をあしらい時間を確認する。そろそろ行かないと遅刻判定になりそうだ。
「じゃあ俺はそろそろ行くぞ」
「了解〜頑張れ〜」
伊織と別れ教室に向かう。廊下を歩きながら俺はさっきの話を思い返した。確かに知らないうちにインストールされているのは怖いがそれよりもゲームの中に入れるということの方が魅力的だ。
「俺のスマホにもインストールされたらな〜」
叶わないであろう願いを呟きゲームの名前を思い出す。
『�����ゲーム』、、、か
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