【完結】スキル【エナジードリンク】で手に入れたのは、モンスターな美女(???)でした? ~異世界絶景紀行~

弦龍劉弦(旧:幻龍総月)

第××話 旅の途中で


 

「うおおおおおおおおおお!?!?!?」


 青年は全速力で山中を走り抜ける。その背後には青年を追いかける猪が5匹。


「「「「「GAUGAUGAUGAUGAU!!!!!」」」」」

「だあああ!!? こっち来るな!!!」


 青年の手には剣が握られているが、青年に立ち向かう勇気は無い。故に、逃げる一択なのだ。


 複雑で道の無い山の中、とうとうつまずき、転んでしまう。


「へぶ?!!」


 変な声を出して転ぶ青年を、猪たちは容赦なく襲い掛かる。


「「「「「GAAAAAAAAAAA!!!」」」」」

「おわああああああああああ!!!??」


 人生の終わりの様な叫びを上げ、身を丸める。そんな絶体絶命の瞬間、


「ふん!!」


 猪たちの横から飛び蹴りを入れる人物が現れた。


 猪達は見事に吹き飛び、地面を転がる。


「GAU?!!」


 起き上がる猪達が飛んで来た人物に目を向ける。


「余所見とは、不敬!!」


 また別の方向から声がし、半透明な何かが猪3匹の身体をすり抜ける。直後、直撃を受けた猪達は動かなくなった。


「GAU?! GUUUUU……!」


 残りの猪達は、勝てないと悟り、その場から逃げようとする。


「逃がさないわよ!!」


 逃げようとした猪達に、地面から大量のツタが襲い掛かり、全身を絡めとっていく。

「GAU!? GAU?!」


 動けない猪は脱出しようと藻掻くが、半透明な物体がすり抜け、動かなくなってしまった。


「これで今夜の夕飯には困らないな」

「余の肉はしっかりと血抜きしなさい!」

「それくらい自分でやってよ……」


 青年を尻目に、2人の美女、1人の美少女が捕らえた猪に近付く。


 青年はゆっくりと立ち上がる。


「お前ら、囮役の心配位しろよ……!!!」



 ◆◆◆



 4人は山の洞窟、獣が昔作った巣の跡で夕飯を食していた。洞窟の前には彼らの荷運びをしている山羊が草を食べている。


 夕飯はさっき捕まえた猪の肉だ。解体は青年がやってのけた。


 猪の肉を木の棒で刺し、焚火の周りに立てて焼いていく。


「お前らさあ、もうちょっと俺に感謝というか労いをだな……」

「過ぎたことをいつまでもくどいぞお主。早く食わないと我輩が全て食ってしまうぞ?」

「お前は加減しろ!! 毎回食い尽くすんだから!!」

「家来。味が薄い。塩」

「ないよ!!」

「ちょっとアサヒ。エナドリ頂戴」

「はいどうぞ!!」


 青年は掌からエナジードリンクの缶を出現させ、少女に渡す。


「ああもうまたこき使われてる……!」

「それがお主の立場だ。諦めろ」


 美女の一人は、体形に似合わない勢いの食べっぷりで、次々と肉を食べていく。


「テューナ!! 余の肉まで食べるでない!!」

「やかましいパントラ。早い物勝ちだ」

「不敬!! 死罪!!」

「やるか?!」

「止めなさいよ二人共!!」

「マカリーも食いすぎ!!」


 騒がしい食事は、獲った肉が全て無くなるまで続いた。



 ◆◆◆



 食事が終わった頃には、外は真っ暗になっていた。



 テューナは自身の身体よりも大きく膨れた腹を抱えて眠り、パントラは自身のデカ過ぎる尻を寝床代わりにしている山羊の上に乗せて眠り、マカリーは自身の頭よりでかい乳で呼吸が苦しくならないように寝ていた。


 アサヒは一人、洞窟から出て、夜空を見上げていた。夜空には満点の星が散りばめられ、どれも絶え間なく光り輝いている。


「まだ先は長いか……」


 小さくぼやきながら、あの日見た、旅の目的となった存在を思い出す。


「……絶対辿り着いてやる。そしてこの目に焼き付けるんだ。誰も到達していない、絶景の島を」


 青年アサヒの目は、夢を見る少年のように輝き、曇りのない真っ直ぐな瞳になっていた。

 

 

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