第24話
「……くん。雛瀬、くん」
「……ぁ」
落ち着いた色のライトが天井にあるのが見えた。夕焼けみたいな色……綺麗。
とん、と肩を叩かれる。はっとして体を起こそうとした、その時。
「だめ。まだ寝てて」
「相良さん……」
さっきまでと格好が違う。黒のサマーセーターに、ハーフパンツ。家着? なのかな。じゃあ、ここは相良さんの家?
きょろきょろと横になったまま視線を動かしていると、相良さんが僕の手をそっと掴んだ。
「止血はしたけど……痛む?」
「たぶん、大丈夫です」
右手の人差し指には真っ白な包帯が巻かれている。左手でなぞると、中には絆創膏のようなものがくっついているとわかった。相良さんはほっとしたように僕が寝ている隣に腰掛けた。ソファかな。低反発で寝心地がいい。
「水、持ってくるね」
「ありがとうございます」
なんか申し訳ないな。家までどんなふうに連れてきてくれたんだろう。僕は意識がなかったから……相良さんに恥ずかしい思いさせちゃったかな。血を見たくらいで気を失ってしまうなんて……なんて弱い人間なんだろう。僕は自分の不甲斐なさに落ち込んでしまった。
しばらくしてから、相良さんがペットボトルを持って姿を現した。中身は透明。
「飲んで」
「……はい」
実を言うと、喉がからからだ。僕は相良さんの手からペットボトルを奪うようにして掴むと、ごくごくと飲み出した。相良さんは少し驚いているのか目が丸くなっている。おいしい……きっと、僕なんか飲んだことない良い水なんだろうな……高そう。後でお金払わないと。3分の1ほど飲み終わったあとで、ようやく飲み口から口を離した。
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