#2 こちら、「入学式」より
明君高校の敷地のすぐとなりには私立の女子校がある。
両校とも今日が入学式であるが、女子高では入学式に参加する父兄での混雑を避けるため、時間を少しずらして開催するようだった。
専もっぱら、女子高はお嬢様校として県内でも有名だ。
そんな生徒達と、古びた校門の大きなアーチと『入学式』の立て看板を汗だくになりながら追い越していく。
なんとか到着した学校は、不気味なほど静まり返っていた。
靴を履き替え、おそるおそる教室へと向かう。
「おはようございます~...」
扉を開けるが誰もいなかった。
どうやら既に、全校生徒は入学式が執り行われる体育館に集合しているようだ。
「本格的にまずい...」
入学式が始まって、静寂に包まれた会場に途中参加するなど、全校生徒の注目を一手に集めるに違いなく、さすがのツタウでもそんな羞恥には耐えられそうなかった。
「もう始まっていたら教室で待っていよう」
そう考えながら体育棟に向かってみると、近づくにつれてザワザワした声が耳に入ってきた。
どうやらまだ入学式は始まってなさそうだ。
なんとか最悪の事態は避けられたことに安堵していると、集団の中に聞き馴染みのある声を見つけた。
これまでの不安感が一気に消えて駆け出す。
「ミク! おはよ! 今日からまた同じ学校だねー」
幼馴染のミクを見つけて、思わず笑顔が溢れる。
そんな
「おはよ。また遅刻したの? ほんとによく進級できたね......
それにツタウは今日から2年生になったんだから、もっとしっかりしないとだよ」
「うっ、相変わらず人の気にしていることを。相変わらず手厳しいなぁ~」
ミクとは家が隣の幼馴染みで、昔から家族ぐるみで仲が良い。
年齢は《ひとつ》ツタウのほうが上だが、ミクには双子の弟がおり、普段からしっかり者で面倒見がいい。
「今朝もどうせ寝坊するだろうって、起こしに行ったのに全く起きないんだもん」
「えっ。全然気付かなかった!」
「まったく微動だにしなかったよ...」
「いや~エヘヘ。でも、入学式ギリギリ間に合って良かt...」
言葉の途中でアナウンスが言葉を
「『それでは、新入生の入場です』」
一瞬で血の気が引いて青ざめた。
始まっていないと思っていた入学式は当にスタートし、プログラムが進行していた。
今日から後輩になった生徒達のクスクスとした笑い声とミクのため息がこだまする。
その声は春の暖かい日差しが差し込む廊下に
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