第44話
教室に戻ると、早速メイド喫茶の営業は始まっていた。
メイド喫茶など、文化祭でも何個かある定番の代物だが、テーブルには親子や他校の制服の学生など、結構多い人が座っていた。
まぁ、他校の奴らの目当てはメイド服を着ている小林だろうがな。
だが、みんながお目当ての小林は、「お待たせしましたご主人様!」と接客しているのではなく、角の一席を陣取って遥香と何かを話していた。
あの2人、学校ではそんなに仲良くない態なはずなのに。
これやもしや、仲良がいい事を学校公認にして一緒に行動するつもりなのか?
それは絶対に阻止しなければならない。
文化祭は無事に終わらないが、仮に終わったとすると、普段の学校生活で遥香の住処で尚且つ俺もよくいる図書室に入り浸るかもしれない。
そうなると、学校で唯一の憩いの場が下ネタで埋め尽くされてしまう。
「何話してるんだ?」
クラスの人に怪しまれないよう、さりげなく2人に声を掛けた。
すると、小林は悩まし気な表情で、
「遥香が接客したくないって言うんだよ」
「いくら文化祭とはいえ、ご主人様とか言うのをためらうのは俺も分からなくはない」
「でも、そうしないとメイド喫茶の意味ないじゃん?」
「提案したの俺じゃないし」
「けど、盛り上げる為には仕方ないじゃい?」
「確かにそうだけど…………………………………………」
「みんなやってるから、やろうよ遥香」
小林は、遥香を説得するが、
「絶対にイヤだ」
猫耳メイドのコスプレをした遥香はそっぽを向いた。
「お前、嫌とか言いながらコスプレはちゃんとするんだな」
「こ、これは優穂が勝手に着せてきただけで、自分からなんて着るわけないじゃない」
「あれー?2人で着替えてる時「かわいー。これでしっぽ付いてるア●ルパール付けたら完璧じゃない!」って喜んでたじゃない」
頬杖を付きながら、小林は遥香のほうを見ると、
「なんであんたはそうゆう事言っちゃう訳!?」
小林の口を全力で塞ぎにかかった。
「だって、あんな嬉しそうな顔してたら誰かに言いたくなるじゃない?」
「言いたくなるじゃないの!言わないの!」
「ならこの喜びをどうしたらいいの?」
「私の分の仕事の糧にしてこい!」
「分かったよ、でもまだ休憩~」
「休憩も何も一回も仕事してないじゃない!」
遥香と小林は、メイド喫茶などお構いなしに大声で言い合っていた。
この状況いつもなら周りの視線が痛い所だが、みんな自分の仕事に集中していて、室内のBGMや話し声で誰も気には留めなかった。
「それにしても、こんなに堂々と遥香と話してて大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ?今は下仁田と小林の関係で話してる態だし」
「こんな大声で元の姿を出してるのに?」
「みんな仕事しててそれどころじゃないよ?それに話しかけ行く時「下仁田さんに呼びかけてくる」って言ったから」
「お前多重人格かよ」
「演技派って呼んでほしいね」
「それよりお前も仕事しろや」
「えーめんどくさいし、男子にエロい目で見られるからヤダ」
それは完璧美少女がミニスカのメイド姿で、フリフリとお尻を振りながら接客してるなんて、誰でもガン見してしまうだろう。
本性が分かってる俺でもつい見てしまう。
いや、みんな同様ガン見する。
「とにかく、私はしないからね」
拗ねていた遥香は、念を押すようにもう一度意思表示をした。
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