第11話011「ダンジョン」



——特訓カリキュラム/二週間目『魔物討伐』


「今週からは、いよいよ『魔物討伐』のカリキュラムへ移行する。各自、魔物討伐は初めての経験だと思うので午前中は先生らの戦闘を見て学ぶように。午後からは実際に魔物を討伐してもらう。気を引き締めてかかるように!」


 俺の中で『おっかないおっさん優勝』で有名なブキャナン宰相の言葉で『魔物討伐』の特訓カリキュラムはスタートした。


 現在、俺たちは王都周辺にある森にいる。


 先生たちが先導する中、俺らは先生の後ろをついて歩きながら談笑していた。


 あ、間違えた⋯⋯!


 俺以外・・・の六人が談笑していた。ボッチな俺は一番後ろで楽しそうにしている六人そいつらを目に入れたくないので、周囲を観察しながら歩いている。


 ちなみに、今日の目標は『3階層までの魔物討伐』らしい。現在、俺以外の六人はレベル7〜9という感じ(柊木はレベル12と別格)なので、まあ、その程度の魔物であれば問題ないという判断だろう。


 森をしばらく歩くと開けたところに出た。すると、そこには、


「え?! あ、あれって、まさか⋯⋯⋯⋯ダンジョンっ!!!!」


 吉村が興奮気味に叫んだ。


 無理もない。目の前に『ダンジョン』があったのだから。


「これは『ダンジョン』といって⋯⋯」


 魔法先生がみんなに『ダンジョン』の説明をした。


——————————————————


【ダンジョン】


・この世界に複数存在するもので、地上からどんどん地下へと階層上になっている空間で、下へと向かう階段が設置された謎の人工物

・ダンジョンの発生条件は不明だが、発生頻度は年に1回あるかどうか。ごく稀に年に2回出現することもある

・その中には魔物が生息しているが、各階層ごとに結界がかけられており、そのため魔物が外に出てくることはない

・ダンジョンの存在理由は不明だが、魔物を倒すことで得られる恩恵(経験値や魔石、アイテムなど)が大きいのでダンジョンは受け入れられている

・ダンジョンごとに階層は異なる。深い階層であればあるほど『ダンジョンの格』は高く、当然、魔物の強さも比例して高いが得られる経験値や魔石、アイテムも良質となる

・『ダンジョンの格』は『ダンジョン・ランク』と呼ばれており、ランクは上から『S級〜F級』までの五段階評価。ただし『未攻略のダンジョン』は別のランクで表され、『未踏破エリアあり』だけのダンジョン・ランクは『X級シングル』。『ダンジョンボスの未討伐』だけだと『XX級ダブル』。そして、その両方だと『XXX級トリプル』と呼称されている

・この『XXX級トリプル』がダンジョン・ランクの最高級とは必ずしも言えないが、長い間『未攻略』であればあるほど、最高級・最高難易度のダンジョンという可能性は高い

・ダンジョンの魔物と外の魔物とでは種類が異なる。

・ダンジョンの魔物はダンジョンで自然生成されるので、一度倒しても数分〜数時間(魔物による)経てば、再び出現するのでレベル上げに適している

・魔物を倒して得られる経験値や魔石、アイテムは、森の魔物よりも高いが外に比べて逃げ場が少ない分、命を落とす可能性は外より高い


——————————————————


「なるほど。魔物の自動生成リポップするのか。それに『ダンジョン・ランク』ね⋯⋯ふむふむ」


 吉村が先生の話を聞きながら、ひとり言をブツブツ言っていた。まあ、この世界のダンジョンのルールだからな。そりゃ真剣に聞くよな。俺もメモメモ⋯⋯と。俺と吉村以外の奴らは何となく・・・・聞いている感じだった。


「ちなみに、このダンジョンは王都近くにあるものではあるが、まだ未攻略・・・のダンジョンだ」

「ええっ!? 未攻略⋯⋯っ!!」


 吉村が一人、また興奮して声を上げる。


「おい、吉村! どういうことだよ? なんで『未攻略』って聞いてそこまでテンション上がってんだ?」


 赤髪リーゼントの吾妻翔太が吉村にメンチを切るような感じで質問する。いつもなら怯えるはずだが、自分の『得意分野』ということで、オタク気質の早口調・・・で説明し出す。


「まだ、詳しくは知らないから何とも言えないけど、こんな王都から徒歩で行けるダンジョンにも関わらず『未攻略』というのはおそらく相当珍しいはずっ!? しかも『未攻略』であれば、ダンジョン事態はもちろん、その中にいる魔物の質も高いはずだ。であれば、経験値や魔石、アイテムの質も期待できる! それに何よりも、王都からこれだけ近いんだ⋯⋯比較的安心・安全にダンジョンへの行き来ができるってことも大きいっ! こんなダンジョンが自国にあるのは相当珍しいんじゃないかなっ?! と、とにかく、かなりラッキーだと思うよっ!!!!」

「よ、よく、ご存知で⋯⋯!? そうです! 吉村様の言う通りです! このダンジョンは王都から歩いて行ける距離にあるにも関わらず、いまだ『未攻略』という⋯⋯世界でもかなり珍しいダンジョンです! しかも『未攻略』というのは『ダンジョンボスの未討伐』『未踏破エリアあり』の両方ですので、『未攻略ダンジョン・ランク』は最高級の『XXX級トリプル』となります! そんな貴重なダンジョンが自国にある我々はその恩恵を独占できています! ああ、神に感謝!」


 吉村の予想以上のダンジョンの理解に魔法先生は驚きつつも、一緒になって『このダンジョンの素晴らしさ』について同じオタクテンションで語り出した。つまり似た者同士オタク仲間ということだ。


 ちなみに、他のメンバーは二人のテンションについていけないでいたが、俺はちゃんと理解していた。だって、ダンジョンなんて『RPGゲームの定番』だからな。吉村ほどではないが俺もゲームはそれなりにやっているのでダンジョンの基本ルールは概ね理解している。


 確かにこんな王都近くにあるダンジョンにも関わらず未攻略⋯⋯しかもダンジョンボスも未討伐で未踏破エリアもあるなんて、相当階層が深い・・ということを示している。


 ゲーム視点で見れば、このダンジョンの貴重さがよくわかるし、何より国にとっても相当に恩恵アドバンテージがデカいということもわかる。


 階層が深いということは、おそらく魔物の強さも『細分化』されているはずなので、レベル上げにもちょうどいいダンジョンだろう。ただ、一つ気になるのは『魔物の最低レベルの強さ』だ。


 おそらく1階層に出てくる魔物が最低レベルの強さだと思うが、そんな最低レベルの魔物を『レベル2』の俺が果たして倒せるのだろうか?


 もし、1階層の魔物でさえ倒せないのであれば、一度、ダンジョン外の森で自分が倒せるレベルの魔物を倒してレベルを上げてから向かうしかないだろう。


 歯痒さはあるが、それでも俺はやると心に決めたのだ!


 と意気込んだところで俺はふと疑問が浮かんだ。「あれ? そういえば『パーティー』を組むとかそういうのもあるのか?」と。すると魔法先生がちょうどタイミングよく、そのことについて説明を始めた。


「さて、次に『パーティー登録』の説明をする。ダンジョンだけでなく外での活動でもそうだが、二人以上で活動するときは『パーティー登録』をする。あと⋯⋯」


 魔法先生の話はこうだ。


——————————————————


【パーティー登録】

・二人以上いれば、パーティー登録を行うことができるが経験値はメンバー数で割られる

・魔物からの経験値が入るには条件があり、必ず一回以上は魔物に攻撃をする必要がある

・『パーティーリーダー』の『固有スキルの効果』はパーティーメンバーにも適用される

・パーティー登録をうまく利用すれば、レベル差のある者はすぐにレベルを上げることができる

・パーティーメンバーはリーダー込みで最大10人まで

・パーティー登録ができたら、ステータス画面の『年齢』の下に『パーティー:メンバー(パーティー名なし)』という項目が現れる(パーティーリーダーは『パーティー:リーダー』となる)

・『パーティー名』をつけたら、( )にパーティー名も追記される

・パーティーはリーダーからもメンバーからも解除できる

・メンバーが死ぬと自動的にパーティーから名前が消える

・パーティーリーダーが死ぬとパーティー自体が自動的に解除される


——————————————————


「まさにゲームでよくあるルールまんま・・・じゃないか!? 何なんだ、この世界は?」


 吉村が魔法先生のパーティー登録の話を聞いてボソッと一人呟く。その内容を聞いて俺も同じ解釈で納得した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る