性悪女子に振られたら、なぜか恋愛相談所を手伝うことになりまして、様々な出会いのお蔭で、学校の人気者になっていました。振った女性? もう眼中にありません
【俺と同じ匂いのする地味な女の子に話しかけたら、俺を掌で転がすぐらいに可愛くなりました】
【俺と同じ匂いのする地味な女の子に話しかけたら、俺を掌で転がすぐらいに可愛くなりました】
続いての春樹のお客さんは学年が1つ下の男の子だった。
「ワタルと言います。よろしくお願いします」と、椅子に座りながらワタルが会釈をすると、春樹も「よろしくお願いします」と、会釈を返す。
「それで悩みは何ですか?」
「同じクラスの鈴村
「ですが?」
「その子の気になっている人を知って、友達として応援するつもりで声を掛けたのに、好きになっていて……」
春樹はその先を察したようで眉を顰めると、「あぁ……もっと詳しく教えて貰って良いですか?」
「はい」
ワタルは過去を話し始める──。
※※※
明恵は学校に着くと、サラサラのロングヘアを撫でながら教室に入ると、誰にも挨拶をすることなく、そそくさと自分の席へと着いた。それはまるで自分から構わないでくれオーラを出しているようだった。
丸い形をした黒縁眼鏡をクイッと上げると、机から教科書を取り出し始める──しばらくして、数学教師が入ってきて授業が始まった。
明恵は教科書とノートを広げると、驚きの表情を浮かべるが、直ぐに悲しげな表情へと変え、ノートをソッと閉じた。
ワタルはその様子を斜め後ろの席から心配そうに見つめていて、明恵の様子がおかしい事に気付いているようだった。
授業が終わるとワタルは直ぐに席を立ち、明恵の席に向かった──そして明恵がしまおうとしたノートを掴むと、パラパラとめくり始めた。
「ちょ、何するの!?」
ワタルは無言で固まる。明恵のノートには見るのも腹立たしい文字がズラリと書かれていた。独特な筆跡からして、すべて同一人物が書いているようだ。
ワタルは込み上げ来る怒りを抑えきれなかったようで、机を殴りつけ「誰だよ、こんな事する奴は!!!」と大声を上げた。
「ちょっと……」
明恵が声を漏らすが無視をする。数人のクラスメイトが驚いた表情を浮かべて、チラチラこちらを見ているが、ワタルは気にせず「こんなん立派な犯罪だから、今日、明恵さんに二度とやりません! って謝ってこないようなら、すぐに警察もっていくわ!!!」
この中に犯人が居るとは限らない。だけど、噂で伝わるかもしれない。ワタルはそう思っているようで教室内に広がるように大声を出しているようだった。
明恵は突然、強張った表情を浮かべて立ち上がり、廊下の方へと走り出す。ワタルは慌てて追いかけた──。
人気のない体育館裏に来ると、明恵はワタルに向かって「なに勝手なことをしてるのよ!!!」と、怒鳴り散らした。
怒るのは当然、そう思っているのかワタルは俯きながら黙っていた。
「これから私、どうすれば良いのよ!? 恥ずかしいし、報復されて悪化するかもしれないし、あなたのせいで更にビクビクして過ごさなきゃいけなくなったじゃない!!!」
ワタルは顔をあげ、明恵の顔を見ると「その気持ちは分かるけど……じゃあ、そのままで良かったのか?」
「えぇ。大人しく我慢していれば、これ以上あれこれ悩む必要ないもの」
「そうか……そいつは悪かった。でも、何もしてこないと思われたらエスカレートすることもあるし、頑張って行動したら、スッキリした未来が来る事だってあり得るかもしれないよ」
ワタルは苦笑いを浮かべると「──俺は経験をしたことあるから、そんな未来も、ちゃんとあることを知っている。だから少しでも心に留めてくれると嬉しいかな。大丈夫、俺の時は一人だったけど、明恵には俺が居るから。今回の件、勝手に俺がやったことだし、何かあっても守るから。だから心配しなくていい」
──明恵はしばらく黙り込み、まだ迷っているようだったが、口元を緩ませると「ありがとう」と返事をした。
※※※
その日の放課後を迎える。明恵を苛めている犯人はまだ謝りに来ていない。ワタルは明恵が教室に置きっぱなしにしようとした落書きされたノートを手に取った。
「本当に行くの?」と、小声で明恵が質問してくる。
「それは相手次第かな。いずれにしても、ここでノートを持ち帰れば、相手はヤバいって思うかもしれないだろ? そうなれば謝ってくるかもしれない。さて──」と、ワタルは言って、廊下に向かって歩き出し「付いてきて」
「うん」
明恵は返事をして席を立つと、ワタルの後ろを歩き出した。廊下に出て少しすると「どこ行くの?」
ワタルは辺りをキョロキョロと見渡すと、「職員室」
「職員室? 何で?」
「それはいま話せない」
「分かった」
──二人は職員室に着き、用事を済ませると、また廊下に出る。階段を下りていると、「鈴村さん」と、クラスメイトの女子生徒が後ろから声を掛けてきた。二人は立ち止まり、後ろを振り向く。
「なに?
「あの……話があるんだけど良いかな?」
「大丈夫だよ」
「えっと……その……ノートの件だけど。ごめんなさい! 私が犯人です!」
明恵は驚いているのか言葉を失っている。ワタルは「で?」と、明恵の代わりに答えた。
「もう二度としませんから、警察だけは……」
明恵は迷っているようで黙り込むが、少しすると口を開き「分かった。行かないよ」
玲奈の顔がパッと明るくなる。ワタルは明恵の言葉だけじゃ足りないと思ったようで「ただし、報復とかも含めて全くしないと約束してくれるならね!」と付け加えた。
玲奈は深く頷き「うん、約束する。だから書いたところを破いて良いかな?」
ワタルは直ぐに証拠隠滅をしようとする玲奈に腹を立てているようで、表情を強張らせる。
打って変わって明恵は嫌な顔せず「分かった。良いよ」と、返事をしてノートを取り出すと、落書きされた部分を切り取り「はい」と、女子生徒に差し出した。
玲奈は受け取ると「ありがとう」と言って、そそくさと退散していく──明恵はそれを見送ってから「これで良かったのかな?」と、小声で言った。
「良かったんじゃないかな。証拠のことばかり気にしている奴だぞ? そのまま持っていたら、それを奪い取ろうと必死になって何かしてくるかもしれない。だったら持ってないと思われていた方が良いと俺は思う」
「そうか……」
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