性悪女子に振られたら、なぜか恋愛相談所を手伝うことになりまして、様々な出会いのお蔭で、学校の人気者になっていました。振った女性? もう眼中にありません
【幼馴染の彼女に俺が必要だと言わせたいけど、いろいろ完璧すぎて出来ない。こうなったら最後の手段に打って出る】
【幼馴染の彼女に俺が必要だと言わせたいけど、いろいろ完璧すぎて出来ない。こうなったら最後の手段に打って出る】
続いての春樹のお客さんは、他校の直樹という男の子だった。
「今日はどうされたんですか?」
春樹がそう聞くと、直樹は落ち着きたかったのか、ペットボトルのお茶をゴクゴクと飲んで、テーブルに置いた。
「俺、何もかも完璧な彼女が居るんですが、心配事があって……」
「心配事? 何が心配なんです?」
「振られないかです」
直樹はそう言って、彼女の事を話し出す──。
※※※
カラッと晴れた夏の朝。ミンミンゼミが忙しく鳴いている中、直樹はボケェー……っと汗を垂らしながら、並木道を通って高校に向かっていた。
「なっちゃん」
直樹は後ろから声を掛けられ、立ち止まると後ろを振り向く。声を掛けた女子は歩きながら、ショートヘアの茶髪を手グシで整えている。手を離すと、切れ長の目を細めてニコッと笑い、直樹に手を振った。
「
「おはよ」
優希が近づいた瞬間、直樹は香水の匂いを感じ取ったのか、「優希、香水を替えたの?」
「うん、どうかな?」
「良い匂いだと思うよ」
「良かった」と、優希は嬉しそうに微笑む。
「行こうか」
「うん」
二人は仲良さそうに肩を並べて歩き出す。
「もうすぐテストだね。勉強している?」
「うん、少しずつだけどね」
「分からない所があったら、教えてあげるから」
「ありがとう」と、直樹は御礼を言いつつも苦笑いを浮かべる。
中学の時は直樹の方が教える立場だった。直樹が怠けていた訳ではないが、高校に入ってからは、すっかり彼女の方が上になってしまったことを気にしているようだった。
――学校に到着すると、優希のもとにワラワラと、女子生徒が寄って来る。優希は挨拶を交わして、楽しそうに笑顔を浮かべて女子生徒と話し始めた。優希は明るく優しい性格をしているので、男女問わずに人気者だった。自然と人が集まってしまうのは仕方ない。
直樹は歩く速さを調節して、少しずつ彼女から離れていった。その表情は寂しそうで、何で優希は、冴えない俺なんかと付き合っているのだろうかと思っているようだった。
※※※
次の授業が体育のバドミントンだったので、直樹は白のTシャツと紺のハーフパンツに着替えると体育館に向かった――直樹は兄貴がバドミントン部で一緒やったことがあるので、自信満々の表情を浮かべていた。直樹は準備体操を終えると、張り切ってコートに入る。
「なっちゃん」
優希がラケットを小刻みに振りながら、近づいてくる――優希も白いTシャツにハーフパンツを着ていて、透き通った白い肌が顔を覗かしていた。そんな露出の多い姿をみて、直樹は目のやり場に困ったようで、視線を逸らした。
優希は直樹の前に立ち止まると、ニコッと笑って「どこ見てたの?」
「太もも」
「あら、正直ね」
「だって視線でバレるだろ」
「そっか――じゃあこっちは?」と、優希はTシャツの袖をめくる。
「おい、冗談でもやめろよ。他の男子に見られるだろ」
「ふふ」
慌てて隠そうとする直樹がおかしかったのか、優希は口に指を当て、笑いだす。
「なんだよ」
「何でもない。それより、一緒に試合しない?」
「自由にやって良いって?」
「うん」
「分かった。じゃあしようぜ」
「うん。それじゃ友達呼んでくるね」と、優希が言って、動きだす。
「え? ちょっと待て。シングルじゃないの?」
「うぅん、男女混合ダブルス!」
優希はそう言うと、駆けて行ってしまった。
「まじか……でも男女混合だったら、もしかしたらムフフな展開も……」
直樹がそんないかがわしいことを考えていると、優希が友達を連れてくる。
「私と直樹ペアね」と、優希が仕切り始め、試合が始まる。
ムフフ展開を期待していた春樹だが、実際は優希に当たらない様にと意識しているようで、ぎこちない動きをしていた。優希はそんな俺の気持ちを知ってから知らずか、果敢に動き回り、直樹のサポートしていた。
――数十分経ち、試合には勝利するものの、春樹の活躍はほとんど無かった。春樹はハァ……ハァ……と息を整えているのに、優希は平然と腕で汗を拭っている。そんな優希をみて、直樹は体力の差を感じているようだった。
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