車旅

この前の夏休みにさー、大学の友達何人かと

せっかく免許取ったんだから車で旅行しよう、って話になったんだよね。

行き当たりばったりの旅に憧れがあったから

まずは方向だけ決めて、適当なところで高速降りちゃおう。

で、地図アプリは帰りと非常時だけ使おう、

発見を楽しみたいから、って感じに意見がまとまった。


で、まあ、旅行当日。

車中泊も考えて、着替えとかレジャー用具とかも用意して、準備万端。

皆超ハイテンションで出発したわけよ。

西に行こうとしか決めてなかったから

車内会議でちょっと詳しい行き先を決めて、

なかなか行かない山陰の方に行こう、となった。

地図無しでもわりかし何とかなって、

現地で、本当にフィーリングで降り口選んで降りたの。

それから10分ぐらい村みたいなところを走ってたら、

前方にかなりデカい山が見えた。

ありがたい寺とかあるんじゃね、行ってみようぜ、

つってそこ目指すことになった。


とまあ、ここまでは順調だったんだけど、

具体的にどの辺からかは覚えてないんだけどさ、

あの、なんていうんだろ、

「飛び出し君」で合ってるのかな?

非常口マークみたいなポーズの、男の子の看板あるじゃん。

そうそう、飛び出し注意を呼びかけるやつ。

あれがやたら置いてあったんだよね。

最初は面白がって数えてたんだけど、

山に近づくにつれてどんどん増えていってる気がして。

皆ちょっと怖くなってたんだけど、

とりま山に何かあるのかだけでも見ていこう、

ほらそこの上り坂を越えたらもうすぐ麓だぞ、つって

手前の坂の頂上に差し掛かった時、見えたんだよね。


今いる所から麓までの道と、その先の山道にまで、

道の両脇に、すっごい数の飛び出し君がずらーって並んでるのが。

伏見稲荷の鳥居みたいに、ほとんど間隔開けずにさ。


俺らもうパニックになっちゃって、

とりあえず高速近くに戻ろう、って地図アプリ開いたんだけど、

いくら読み込んでも、今いる所に道が表示されないんだよ。

衛星画像でも森が表示されるだけで。

飛び出し君なんて影も形も無い。

もうどうしようもなくなっちゃって、

半分ヤケクソで来た道を戻ったら、意外と何事も無く

地図にも表示されるさっきの村みたいなところに戻って

そこから高速にも普通に帰れたの。


その後は道に迷いようがないメジャーな観光地を巡って、

結果としてそれなりに楽しい旅行にはなったから良かったんだけど、

あれ以来、飛び出し君を見かける度に

ついびくっとしちゃうんだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る