第1回「エイル&クロノヒョウコラボ企画」 クロノヒョウ 様 エイル

「教授本当にあるのですか?」

 

 私の夫で考古学会の末席を汚している教授のアシスタントをしている。他に人を雇うお金が、ないからだけどね。

 

「私の古代語の翻訳が間違ってなければある!!太古の忘れられた城と第13番聖典を刻んだ石板が地下に眠っている」

 

「地下?ここは湿地帯ですよ?掘削出来ます?」

 

「その前に、聞きたまえ。なんと!!古代人はこの沼にイカダを浮かべて上に城を建てたのだ。ロマンだろ?」

 

「バカなんですかね?雨風で沈没しますよね?」

 

「ハーハハハ!!城の設計は完璧だった。しかしながら人員と物資の重さを計算してなかった!!」

 

「まさか・・・」

 

「そのまさかだ!!忘れられた城は重量オーバーで沈没したのだ」

 

「そんなおバカな人が作ったものが、未だに残ってます?風化して跡形もないのでは?」

 

「いや残ってる可能性はある。この沼は酸素濃度が低く分解する微生物の活動が鈍い。さらに深いから水の流れも少なく低温だ。無事である可能性は高い」

 

「つまりこの沼地の奥深くにあると。それでどのあたりなんですか?教授様?」

 

「ん?思ったよりも底無し沼が広いと思わなくてな・・・」

 

「どうするのですか?」

 

「ほれ水を掻き出すバケツならある」

 

 バケツを2つバックパックから取り出す教授である。

 

「琵琶湖くらいはありますが?どのくらいかかると思います?」

 

「そうだな、琵琶湖の約275億立方メートルとして、バケツ1杯10リットルなので27億5千万回掻き出すわけだ。一人1分に1杯として、二人で2杯とすると2991万6666時間となりざっと2616年だ」

 

「西暦より長いとか馬鹿なんですか!?真面目に計算しなくても分かることを計算するな!!計算してもどうやって長生きするんですか?」

 

「もちろん愛しの妻の愛情籠もった食事に決まってる」

 

「2616年ぐらいノンストップで掻き出す仕事がありますが?」

 

「そんな絶対零度の視線を向けられると、ゾクゾクするじゃないか」

 

「それでやるんですか?沈めますよ?」

 

 なんかムカつく夫だけど、発見したら生活に困らない収入が得られるから、背中を押して上げる。

 

「あっ、物理的に押さないで!?ソナーの電池が水没する!!あと泳げない。ねぇかわいい愛しの妻よ助けてぇ〜〜」

 

「ダメな旦那は沈んで良いけど、ソナーと教授を沈められないので助けてあげます」

 

「素晴らしいアシスタントをもって幸せだ」

 

「ソナー使って下さい」

 

「ソナーの解析方法の本がここにある。私は勉強するから、君はこの取り扱い説明書を読んで覚えてくれ」

 

「このどアホーー!!」

 

 私は渾身のドロップキックでどアホな夫を底無し沼に沈める。

 

「あれ?なんで?」ドッボーン

 

 教授をロープで引き上げる。

 

「帰りますよ。勉強は部屋でしましょう」

 

「二人きりだと、違う勉強しかしないからソナーの勉強が出来なくてだな」

 

「私が悪いと?」

 

「ですよね?なんで○エプロンとか、ノー○○○とかで誘うから夫としては我慢できない」

 

「教授のセクハラ!!」

 

 再びドロップキックで教授を突き落とす。

 

「また泥沼はいやー!!」ドッボーン

 

 なんだかんだと世話の焼ける夫を引き上げて、研究所という名の自宅への帰路につくのだった。

 

「酷い目にあった」

 

「遺跡は無かったですけども、楽しい夫婦の旅行でしたね」

 

「そうか?」

 

「ええ、未開の地の自然は歩くだけで楽しいでしょ?」

 

「それは良かった。大学に忘れられた城と第13番聖典なんてウソで出張費を貰ったかいがある」

 

「それ、横領!!」

 

 私は助手席に乗る教授を車から放り出したのだった。


「危ない!!あれ?落ちてる!!これ事故だよ!!」

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